チェンソーマン レゼ篇「アニメの狂気と現実へのオマージュ」
チェンソーマンの映画公開前に
「総集編」が配信された。
あれ? 私が原作で一番好きなシーンはカットだっけ?
と思ったらTVアニメではその直前までだったらしく、
それがヒロイン「マキマ」と一緒に映画を観るシーンなのだ。
このためにあそこで終えて、映画にしたのか?
というくらい冒頭で原作が昇華されていてもう泣ける。
推し、という文化があるが
人間とは複雑で、
初めは嫌いだったりする。
あれ? チェンソーマンってどんな感じだったか? と見直すと
やっぱり主人公「デンジ」のガキすぎる心情設定に嫌気がさしたりする。
(それが肝なんだけど、それでも)
それだけに
藤本タツキ先生が織り込んでくる文学のような言葉や表現が
際立つ。
TV版では
マキマが、デンジの幼稚な感想に対して、
「相手のことを知れば知るほど、愛情行為やキスも気持ちよくなる。」や
アキ君の
寿命が短いのに煙草を始める件など。
あとは悪魔のパワーちゃんが
怯える人間(コベニちゃん)の顔面を大笑いする悪魔の視点など
急に考えさせられる。
で、映画の話に戻る。
あのシーンを映画館で観られるだけで私は泣けた。
アホみたいに狂気のデザインのヒーローを
アニメの技術で血肉を宿して躍らせる
そのクールっぷりが凄まじいが
見逃さないでほしいのは
レトロ喫茶店で光の中に浮かぶ埃、(これは、あるあるだね)
大雨の打ちつけるガラスの雨粒が身体や机に影を落としている描写など。
こうして、アニメとして表現することで
現実が実に色気のあるものであるのが伝わる。
「こっちに来なよー」(レゼ)
の時の、小指の立ち方に実に言葉ではない「語り」があること、
絵のおもしろさ、を感じた。
ちなみに、映画館で
ずっと最後までしゃべり続けるグループが近くにいたが、(最後までしゃべり続けているのには初めて出会った)
ガキンちょだな。
俺はスゲーから、それでも関係なく泣けるんだぜー、
と、さらに上のガキになることで乗り越えました(;^ω^)
(私より近かった方はしんどいだろう。)
さぁ、ここからは少しネタバレもあります!!
爆弾といえば、
花火も爆弾ではないが、火薬の一種であり、
色のついた爆発が点々と空に続く激しいバトルのワンシーンが良い、
個人的にそうかな、と思ったのが
焼夷弾(しょういだん、戦争のときに落とされる火災を起こすことに特化した庶民を苦しめるもの)
がバラまかられたシーンがあったように思える。
あれは
映画「この世界の片隅に」オマージュじゃないだろうか。
実は製作が同じくMAPPAなのだ。
(私が一番好きな映画であり、先日観なおしたばかり。)
で、
初日の夜にSNSで議論になりかけていた
デンジの性に対する良し悪し。
米津玄師さんが端を発したという
デンジは性欲で動いている、とみえてとても紳士論。
不快な人もいる妄想。
でも、多かれ少なかれ、あんな感じよ、男って。
マキマとレゼが抱き枕カバーみたくなってたでしょ。
あんな感じ。
でも、だからこそラストシーンが切ない。
「賢くなりなよ。」
だって。
まるで恋愛文学みたい。
恋愛には誰も賢くなれない。(というのはレトリックであって絶対賢くなれるはずなんだけど。)
最近、伝説の映画監督、小津安二郎監督の言葉が染みる
「品行は無理でも、品性は持っていよう。」と。
(これ、スキャンダルやいじめ、戦争、いろんな部分で最後に当てはまる。)
喫茶店のマスターの最後の言葉
「あの人は君には可愛すぎたんだ・・・。
いつかお似合いの相手が現れるよ。」
というのが深すぎる。
誰だって、高嶺の花を望むからね。
うーん、本当に脚本も原作も素晴らしい。
私は大泣きしました。
今回の映画のパッケージングはサイズもテーマも最高だった。
これは何の力なのだろう、要検証である。
YouTubeでも映画ものまねレビューしてます、
ダメ沢直樹(ウェルダン穂積)でした!
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