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私の好きな映画

じょ〜い小川
2024/09/06 21:17

期待通りの江口のりこによる中年女性クライシス『愛に乱暴』

■愛に乱暴

(c)2013 吉田修一/新潮社 (c)2024『愛に乱暴』製作委員会

〈作品データ〉

「悪人」や「パレード」、「横道世之介」などを手掛けた吉田修一原作の「愛に乱暴」を江口のりこ主演で映画化したある夫婦にまつわる重いヒューマンドラマ。初瀬桃子は夫の真守と共に実家の敷地内にある離れで暮らす。姑や夫の仲も微妙な中で桃子は月に数回開催する石鹸作り教室の講師をしたり、高価な食器類を買い揃えることでそれなりの充実を得ていたが、ある日、真守からある人と会わせたいと言われ、指定の時間に喫茶店に行くと思いもよらぬことを告げられてしまう。初瀬桃子役を江口のりこが演じ、他小泉孝太郎、馬場ふみか、水間ロン、青木柚、斉藤陽一郎、梅沢昌代、西本竜樹、堀井新太、岩瀬亮、風吹ジュンが出演。

・8月30日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷他全国ロードショー

・上映時間:105分

・配給:東京テアトル

【スタッフ】

監督・脚本:森ガキ侑大/脚本:山崎佐保子、鈴木史子

【キャスト】

 江口のりこ、小泉孝太郎、馬場ふみか、水間ロン、青木柚、斉藤陽一郎、梅沢昌代、西本竜樹、堀井新太、岩瀬亮、風吹ジュン

公式HP:https://www.ainiranbou.com/


〈『愛に乱暴』レビュー〉

今年に入って『あまろっく』に『お母さんが一緒』などで強いインパクトを残す演技を見せつけてくれ、絶好調な江口のりこ。そんな江口のりこが主演で、吉田修一原作の映画化作品『愛に乱暴』。「江口のりこの夫婦ものか。珍しいな」って思ったのも束の間、

異様に空回りしている江口のりこが演じる奥さんが、徐々に夫婦生活が綻び、修復不可能な所から人間性が壊れていき悲劇を生み出している。

(c)2013 吉田修一/新潮社 (c)2024『愛に乱暴』製作委員会

江口のりこが演じるアラフォーぐらいの主婦兼市民講座講師とサラリーマンの夫に、夫婦が住む家の敷地内の母家で暮らす夫の母親らの日常を見ていく。一見、その近所で起こる謎の連続不審火事件以外は江口のりこが演じる桃子の日常を見る映画なんだけど、夫婦間から姑との関係、市民講座内での様子、市民講座を運営するかつて桃子が務めていた会社の元同僚と接する場面など微妙におかしな空気を醸し出している。

(c)2013 吉田修一/新潮社 (c)2024『愛に乱暴』製作委員会

こうした微妙な空気から徐々に空回りしていき、壊れてくる江口のりこをひたすら見る映画だけど、その壊れ方が中盤以降エスカレートし、悲劇に変わる様子に絶望感を帯びていき、不謹慎だが面白くなる。まぁ、壊れた江口のりこを見ていくのは『お母さんが一緒』の江口のりこが演じた役と同じなんだけど、これは江口のりこだけでなく、夫の真守を演じた小泉孝太郎や姑を演じた風吹ジュンらの桃子の日常に関わる人達を演じる助演らが出すよそよそしさや退屈感、鬱屈感などであり、小泉孝太郎と風吹ジュン、青木柚、斉藤陽一郎らの上手さを感じられる。

壊れる中年女性を見ていく感覚は『お母さんが一緒』と同様だが、今回はシリアスなホームドラマで、姑がいることからかつての昼ドラのようでいてそれ以上にストレンジな世界観を見せてくれはするが、一方で水間ロンが演じるホームセンターのバイト君の行動や不審火事件など最後までぼんやりした部分もあるので、見終わるとどうにもふんわりした感覚が残り、ピリッとしない。

ふんわりどんよりな中年女性の悲劇としては手応えはある。ここのところの江口のりこによる中年女性クライシスを見れるという部分では期待通りではあるが、最後までピリッとしないのも確かでそこが惜しい。それでも、

今後も江口のりこ主演&メインキャストの映画から目が離せないかな。

(c)2013 吉田修一/新潮社 (c)2024『愛に乱暴』製作委員会
(c)2013 吉田修一/新潮社 (c)2024『愛に乱暴』製作委員会
(c)2013 吉田修一/新潮社 (c)2024『愛に乱暴』製作委員会
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