■ボストン1947

〈作品データ〉

1936年のベルリンオリンピックの男子マラソンに日本代表として出場し金メダルを獲得した韓国人のソン・ギジョンの実話エピソードを基にしたスポーツ&ヒューマンドラマ！第二次世界大戦後の朝鮮で、元金メダリストのソン・ギジョンは競技生活から離れ鬱屈した日々を過ごすが、ある日、ベルリンオリンピックで銅メダルを獲得したナム・スンニョンからの必死の誘いで再び陸上の世界にコーチとして復帰し、ボストンマラソンへの出場を果たすために奔走する。ソン・ギジョン役をハ・ジョンウが演じ、他イム・シワン、ペ・ソンウ、キム・サンホ、パク・ウンビンが出演。

・８月30日（金)より新宿武蔵野館他全国ロードショー

・上映時間:108分

・配給:ショウゲート

【スタッフ】

監督・脚本・製作:カン・ジェギュ/脚本:イ・ジョンファ

【キャスト】

 ハ・ジョンウ、イム・シワン、ペ・ソンウ、キム・サンホ、パク・ウンビン

原題:Road to Boston/製作国:韓国/製作年:2023年

公式HP:https://1947boston.jp/

〈『ボストン1947』レビュー〉

この映画を見るまで韓国の国民的英雄のソン・ギジョンやソ・ユンボクなどを知らなかったが、『シュリ』や『ブラザーフッド』を手掛けたカン・ジェギュ監督作品ということで興味があった『ボストン1947』。前半のソン・ギジョンがコーチとして復帰し、ソ・ユンボクらを育てる辺りはごく普通のスポ根映画ではあったが、中盤に差し掛かるぐらいからボストンマラソンに出るに当たる苦労エピソードやボストンに着いてからの数々のトラブルなど、

全体的に韓国版『炎のランナー』のような作りになっている。

というか、短距離走と長距離走という競技の違いから一概に韓国版『炎のランナー』と言うのはいかがかなとも思うが、街を駆け抜けるマラソン競技や練習風景、渡米してからの大会前のよもやのトラブルや白熱する本番の競技シーンなど、『炎のランナー』の影響をヒシヒシと感じ取れる。その最たるものがソ・ユンボクが地元の丘というか山を駆け巡るシーンで、あれは『炎のランナー』の浜辺を走るシーンのオマージュだと思える。

中盤以降、トラブルにつぐトラブルで映画が面白くなるが、特に資金調達のエピソードは日本のプロ野球の広島東洋カープの球団創設時の貧乏エピソードそのままで、奇しくもダブって見える。それと、やたらとヤカンが出てきたり、キムチやコチジャンといったソウルフードが出てきたり、あと渡米後の最大のトラブルになる太極旗へのこだわりなど随所に韓国人らしさが垣間見える、韓国版『炎のランナー』である。

それと、タイトルに1947という数字を入れているように1947年のソウル近郊の様子を見事に再現している。『ブラザーフッド』に比べると全体的に牧歌的で明るい雰囲気だが、それって1950年以降の朝鮮戦争より前の時代だから、戦争状態になる前の平和な朝鮮を描いている。日本統治下から独立して1950年に戦争状態になるまでの間、アメリカ兵こそはちょこちょこいるが平和なムードはまさしく「ソウルの春」だったんじゃないだろうか？

『炎のランナー』の影響を感じつつ、数々の韓国らしさを存分に味わえる韓国版『炎のランナー』。

後半のレースシーンも白熱した展開なので、良質なスポーツ映画である。