北野作品の特徴に「キタノブルー」「静と動の混在」「突然のバイオレンス」とシーンが印象に残るが「台詞」も印象に残ります。印象に残る「セリフ」をお伝えします。

🎬「キッズリターン」

シンジ（安藤政信）：マーちゃん、俺たちもう終わっちゃったのかなぁ？

マサル（金子賢）：バカヤロー、まだ始まっちゃいねぇよ！

このセリフを「バカヤロー、まだ始まってもいねぇよ！」と少し変わった形で覚えられているセリフでもあります。私自身の事で恐縮ですが事故の後遺症で自暴自棄になっていた時、なんとなく再視聴して このセリフとシーンが心に残り、自分にとって「生きる原動力」になった言葉でもあります。

このセリフにはバイク事故後の監督自身の思いが投影されている。もうたけしは終わった！再起不能などの報道が目に着いた。その時に「冗談じゃない！まだ終わっても、始まっちゃいねぇよ！」との心境がこのセリフに込められたと思う。

話はそれるが、ビートたけしものまねで言う常套句（じょうとうく）に「ダンカン！馬鹿野郎!」があるが本人はほとんど言ったことはなく、ものまねをしている松村邦洋氏の「いかにも言いそうな」フレーズがいつの間にかオリジナルになってしまった。

同じキッズリターンからもう一つ。

ボクサー林（モロ師岡）：「強いヤツは、いつも強いんだよ。そんなカタギばっかりやってちゃ、いけないよ。弱いヤツが酒やめたからったって、どっちにしろ弱いんだから」

アウトローな林（モロ師岡）が言ったセリフ。このセリフは監督の若い時にいた先輩芸人から飲みに誘われたエピソード。「次の日に仕事で撮影」があるで断ったがその先輩が「芸人は飲むんだよ。面白い奴は面白いんだよ」と言いその口車に乗り飲みに行き失敗してしまった。

キッズリターンはシンジとマサルの甘酸っぱさ0の青春物語であるが若い時の北野監督がやってきてた事（漫才コンビ結成、ボクシングジムへ通う、タクシーの運転手、ジャズ喫茶店のボーイ等）を出演者に投影した作品でもある。ヤクザ世界には多分憧れの思いがあったのかと思う。

🎬菊次郎の夏

菊次郎（ビートたけし）：俺たちもここでお別れだな。またお母さん探しに行こうな。元気でな。坊主、おばあちゃん大事にしな。な？

ヤクザ風な出で立ち、破天荒な菊次郎。「不器用な優しさ」がまたこのセリフを際立てさせた。

セリフはないが菊次郎が母親に会いに老人ホームへ行くも息子の事を忘れているであろうと思い、遠くから見て帰る。息子として寂し気なシーンも心に打つものがある。

自称マザコンと話す北野監督。息子にとって「母親」は甘えたくなる存在。

🎬アウトレイジ

大友（ビートたけし）：破門したり取り消したり、てめえの舌は何枚あるんだよ、この野郎！

このセリフは親でもある池元組長（國村隼）へ向けたセリフ。散々、手下である大友組へよごれ仕事をさせていたツケが回る。二枚舌キャラである池元のスーツの襟を二枚にしないか？と衣装の黒澤和子氏が提案し採用された。池元組長の襟に注目。

加藤（三浦友和）：これでおあいこだから五分の手打ちにして下さいって？会長はそれなりに繕ってらっしゃるけどな。チンピラひとり殺したくらいでケジメ付けたと思ったら大間違いだよ！

他のヤクザ・マフィア映画ではセリフを言いながらコワモテを強調するが演じた三浦友和は品のあるインテリヤクザな風貌。このセリフを言う三浦友和の凄みは他のコワモテよりも怖く、とても印象に残るセリフ回し。永遠の青春スターで二枚目な三浦友和の新境地を観た。

🎬BROTHER

山本（ビートたけし）：ファッキンジャップくらい分かるよ バカヤロー

作品を観ていなくてもなんとなく聞いたことのあるセリフと思う。

抗争の果てに日本での居場所がなくったヤクザの山本が腹違いの弟（真木蔵人）へ会いに渡米したがまた現地のマフィアと抗争。

そのマフィアとの手打ち的な話し合いに行くも現地のマフィアが「どうせ言葉がわからないだろう～」と言いたい放題。しかしファッキンジャップと聞き山本が立ちあがりながら・・・このシーンにインスパイアされたのがヒップホップのZEEBRA。「Neva Enuff feat. AKTION」という曲を作る。

Neva Enuff featuring AKTION / ZEEBRA【Official Music Video】

他にも印象に残るセリフのある北野作品をぜひご覧ください！

ではバイビ～。