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かこ
2025/11/02 22:14

史上最悪の爆弾魔の名前は、スズキタゴサク?映画『爆弾』考察・感想・レビュー

先日、noteさん主催の試写会で鑑賞いたしました。『爆弾』面白かったです!
佐藤二朗さんの演技に引き込まれて、あっという間にエンドロールでした。

▼あらすじ
酒に酔って暴れ、警察に逮捕された謎の中年男は、取り調べに対してスズキタゴサクと名乗ると、突然霊感だと言って爆破事件の発生を予知してみせる。スズキの正体も、その目的も一切分からない中、取り調べに当たった警視庁捜査一課の類家は、スズキの言動から次の爆発現場を割り出そうと、その挑発に真正面から挑んでいくのだったが。引用元:allcinema
 


【スズキタゴサクが魅せる、緊張感MAXのエンタメ】
 

時間は待ってくれない。
推理が間に合わない。
救いの手が届かない。

そうさせるのが、佐藤二朗演じる「スズキタゴサク」だ。
霊感があると言い放ち、爆破の時間を当ててしまう男。無邪気な笑顔で、人命を賭けた謎かけを始めるのだ。
タゴサクの言葉を読み違えれば、東京が破壊される。
 

しかし本作は、緊迫のタイムリミットサスペンスでありながら、どこか“観ることの快楽”を感じさせる。
なぜなら、タゴサクという人物そのものが、まるで仕掛けられたエンタメ装置のようだからだ。
スクリーン全体に映る表情、指先、言葉の間合い、そのすべてに目が離せなくなる。
取調室という閉ざされた空間で、これほどの不気味さに高揚感を覚えるのは不思議だ。
本音をはぐらかすような笑顔、信じていいのかわからない言葉。真実と虚構の境が曖昧になるその「不確かさ」こそ、観客を釘付けにする最大のスリルだ。

今まで感じていた「佐藤二朗=安心感」は一瞬で崩れ落ちる、この裏切りこそがキャスティングの妙であり、作品全体を支配している。
 

 

タゴサクと対峙するのが、警視庁捜査一課・強行犯捜査係の刑事、類家。演じるのは山田裕貴。第一印象はパッとしない。
しかし、メガネの奥の目は、見透かされてしまうのではと感じるほど鋭い。タゴサクが繰り返す、のらりくらりとした態度にも、彼は集中力を切らさず心理戦を続ける。
この二人、変わり者という点では“似たもの同士”かもしれない。


そして忘れてはならないのが、タゴサクの狂気には理由があるということ。

爆弾が東京を破壊する前に、すでに壊れてしまったものがある。それが警察とどう絡んでいるのかに注目したい。
 

監督を務めたのは、CMディレクター出身の永井聡。静と動、理性と混乱を切り替えながら、観客を最後まで拘束し続ける。
 

そして主題歌の「I AM HERO」。
歌唱は、ロックバンド、エレファントカシマシのヴォーカルであり、ソロでも活躍する宮本浩次。繰り返される「I AM HERO」のフレーズは、まるで、タゴサクがスクリーンの裏側で叫んでいるように聞こえる。
楽曲に“本当の自分の声”を込めたという宮本浩次の思いにも、どこか響き合っているように感じた。
 


果たして物語はここで終わるのだろうか。
タゴサクの謎解きがこの先も続くとしたら、次の爆弾はどこにあるのか。

タゴサクが仕掛ける、緊張感MAXのエンタメをぜひ劇場で。

映画『爆弾』
10月31日(金)より全国ロードショー
 


▼キャスト
山田裕貴 伊藤沙莉 染谷将太
坂東龍汰 寛一郎 片岡千之助 中田青渚
加藤雅也 正名僕蔵 夏川結衣
渡部篤郎 佐藤二朗
 

原作:吳勝浩『爆弹』(講談社文庫)
監督:永井聡 脚本:八津弘幸 山浦雅大
企画・プロデューサー:岡田翔太
音楽:YAFFLE
主題歌:宮本浩次「I AM HERO」(UNIVERSAL SIGMA)
 

製作年:2025年|製作国:日本|配給:ワーナー・ブラザース映画|劇場公開日:2025年10月31日|上映時間:137分|映倫区分:PG12

(c)呉勝浩/講談社2025映画「爆弾」製作委員会




 

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