『リアム・ギャラガー:ライブ・アット・ネブワース 2022』感想・レビュー
あのOasisがついに再結成されるというニュースは、音楽ファンにとって衝撃だった。
現在ワールドツアーが展開中で、10月には日本公演も予定されている。
そんな中、ご縁あり『リアム・ギャラガー:ライブ・アット・ネブワース 2022』を試写会で鑑賞する機会に恵まれた。

グザヴィエ・ドラン監督『Mommy/マミー』(2014)では、15歳のスティーヴが解放感を表現する重要な場面でOasisの「Wonderwall」が流れる。
また、ダニエル・ギル監督『モダンライフ・イズ・ラビッシュ〜ロンドンの泣き虫ギタリスト〜』(2017)では、主人公リアムと恋人が出会うきっかけとなるのが、Blurのアルバムだ。こうした作品からも、90年代ブリットポップが映画の中でも息づいていることが感じられる。
Oasisのキャリアを語るうえで欠かせないのが、1996年8月10・11日にネブワース・パークで開催された2日間のライブである。
延べ25万人を動員し、250万人がチケットを求めたというこの公演は、バンドの絶頂を象徴する伝説として、イギリス音楽史に刻まれた社会現象となった。
そして26年の時を経て、あの伝説が同じ場所で熱狂的に“再誕”した。
それが本作、『リアム・ギャラガー:ライブ・アット・ネブワース 2022』だ。
Oasis解散後、ソロとしてリアムが再びステージに立ち、「伝説の続き」を刻んだ2022年夏のライブを収めている。
かつての熱狂を呼び覚ますかのように、彼が歌い上げた名曲の数々と、時代を超えて集結したファンの姿が、圧倒的な臨場感でスクリーンに蘇る。


セットリストは、ソロの代表作とOasis時代の名曲が絶妙にミックスされ、ファンにはたまらない構成だ。
この感情を揺さぶる数々の名曲こそが、映画のハイライトである。
心の叫びを歌った「Live Forever」は、会場全体に一体感が生まれ、この曲が世代を超えたファンの共感を呼んでいる。
そして「Cigarettes & Alcohol」では、クールに現実からの解放を煽る。
他にも「Wonderwall」「Champagne Supernova」「Stand by Me」など、ライブに終わりがないのでは?と思わせる程に名曲が続く。もはや全編クライマックスだ。
特に夜空の下、何万人もの携帯の光が作る幻想的な風景と大合唱は、この日、ネブワースに集まった人々の心に深く刻まれたことだろう。
さらに注目すべきは、ステージ上のリアムだけでなく、会場のファン一人ひとりだ。
自身の人生、青春、そして思いをこの聖地にぶつけている。
筆者もスクリーン越しにその空気に触れ、まるで会場の一人になったかのような感動と高揚感を覚えた。
この膨大なエネルギーを引き出すのが、リアム・ギャラガーの「ブレない存在感」だ。
マラカスやタンバリンを手に、トレードマークの後ろ手で仁王立ちし、歌に全振りした独特なスタイル。
その安定感こそが、ライブを支える核となっているのだ。
ファンは、リアムが動じず堂々と構え続けることを知っているからこそ、長年にわたる愛情や感情を安心してぶつけられる。
本作を観ると、偉大なロックスターに自らの人生を預けられる観客の姿が、心底羨ましく思えてくる。


物語のラストにリアムは言う、
「主役はファンだ」と。
2022年のネブワースで起きたことは、不滅のロックンロールスターと、彼の音楽を人生の支えとしてきたファンたちが、互いの魂をぶつけ合った紛れもない事実である。
それは、ネブワースの熱狂が再び蘇った瞬間でもあった。
この伝説はこの日だけで終わらない。
映画を通して、今度は観客の心に残るのだ。
この歴史的瞬間と、会場を包み込んだリアムとファンのエネルギーを、ぜひ映画館のスクリーンで体感してほしい。
『リアム・ギャラガー:ライブ・アット・ネブワース 2022』
10月17日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー!
原題:
Liam Gallagher - Live at Knebworth 22
上映時間:80分
監督:トビー・L
出演:リアム・ギャラガー
製作年:2025年
製作国:イギリス
配給:WOWOW
セットリスト
1.Hello*
2.Wall of Glass
3.Shockwave
4.Everything's Electric
5.Stand By Me*
6.Roll It Over*
7.Slide Away*
8.More Power
9.The River
10.Once
11.Some Might Say*
12.Cigarettes & Alcohol*
13.Supersonic*
14.Wonderwall*
15.Live Forever*
16.Champagne Supernova*
*オアシス楽曲
(引用元:『リアム・ギャラガー:ライブ・アット・ネブワース 2022』公式サイト)