2025年に観た映画(55) 「佐藤さんと佐藤さん」

厚労省の統計資料(H17年~23年)によると、1日に結婚するカップルは平均1,813組。一方離婚する夫婦の平均は646組なのだそうです。年間にすると646 × 365 = 235,790組の夫婦が結婚生活に終止符を打っている。かくいう私も、どちらも経験済みです。
これはそんな大勢いる中の一組、ある男女が出逢ってからの15年間の物語。非常に身近な“夫婦あるある”問題をちりばめながら、夫婦であり続ける事の難しさを丁寧に描いた一作。
妻と夫の経済力の格差、家事の分担や子供の世話といった、どこの家庭でも起こる極々一般的な摩擦要因に、佐藤家ならではの特殊事情が加わって、お互いのストレスが蓄積していく。思い通りにいかない原因を相手に押し付け合う様子は、よくあるドラマ上のシチュエーションでもありながら、天野監督の演出はとても自然でリアル。また岸井ゆきの、宮沢氷魚の両佐藤さんだけでなくベンガルや佐々木希や藤原さくらといった、2人が反面教師とすべき先達を演じる役者さん達がとてもイイ味を出しています(あと弟役の三浦獠太君も)。
どこか吹っ切れた感を漂わせる保(宮沢)とは対照的に、紗千(岸井)が最後に流す涙が印象的です。あのメールを送っておけばと、本人に成り代わってタラレバを後悔するのでした。でももしかしたら、2人の夫婦関係はこれで終わりじゃないのでは...と勝手な妄想も広がった。観終わった直後より、家に帰ってからじわじわと余韻がきている、そんな作品となりました。
パンフの「天野千尋監督が語るPRODUCTION NOTES」によると、監督自身の結婚・出産時の経験が本作のプロットに大きく反映されているらしい。16㎜フィルムとデジタル撮影の使い分けといった演出もとても効果的で、ちょっと唸らされました。
そういえば、私の会社にもいました。最初の結婚で旦那の姓に変えた数年後に離婚して、旧姓に戻すのが憚られ旦那の姓のまま仕事を続けていたら、再婚した相手が前の夫と同じ姓だったという女性が。こっちはもうこの話題にどう触れてよいのか判らず、再婚おめでとうの一言も言えないままです。
№54
日付:2025/12/6
タイトル:佐藤さんと佐藤さん
監督・共同脚本:天野千尋
劇場名:TOHOシネマズ小田原 SCREEN6
パンフレット:あり(¥990)
評価:6






22歳~37歳までの佐藤沙千を演じる岸井ゆきのさん。この女優さんを過小評価していました。台詞回しや活舌だけでは推し量れない女優としての存在感。素晴らしかった。

- イントロダクション
- ストーリー
- インタビュー 岸井ゆきの
- インタビュー 宮沢氷魚
- キャスト
- ひとまず今日を生きてみる 武田砂鉄(ライター)
- インタビュー 唯川恵(作家)
- 今の日本に生きる、私たちの等身大でリアルでビターなマリッジストーリー 折田千鶴子(映画評論家)
- 天野千尋監督が語るPRODUCTION NOTES 企画の成り立ちと脚本について/キャスティングについて/美術、映像、編集について/衣装とメイクについて/音楽と主題歌について/タイトルと、メッセージについて
- スタッフ
- 主題歌
- クレジット
