え?「光州事件」を日本の超有名ドラマのような角度で取り上げる『1980 僕たちの光州事件』

え?「光州事件」を日本の超有名ドラマのような角度で取り上げる『1980 僕たちの光州事件』
突如立ち上げた「映画×社会」ですが、何も万博の記事だけではありません。それだったら「映画×万博」にします。
「映画×社会」では日本での歴史・事件はもちろん、世界の歴史・事件も取り上げます。
そんな中で、現在公開中の映画でいくつかタイムリーな映画があるので、順次取り上げていきます。
今回取り上げる映画は韓国映画『1980 僕たちの光州事件』。1980年5月18日から27日に起こった学生や市民による軍事政権に対する民主化要求の蜂起、それが「光州事件」。

これまでにも、『光州5・18』や『タクシー運転手 約束は海を越えて』、あと複数の時代で構成された『ペパーミント・キャンディー』など光州事件そのものを取り上げた映画はいくつもある。


『光州5・18』は蜂起した市民の目線、
『タクシー運転手 約束は海を越えて』は光州事件を取材する外国人記者と記者に雇われたタクシードライバー視点、
『ペパーミント・キャンディー』では主人公が軍に所属していたなど、
様々な視点で光州事件が描かれているが、『1980 僕たちの光州事件』は基本的には蜂起する市民側でも軍部側でもなく、
この暴動とも内戦とも言える騒乱に巻き込まれた市民の目線
というのが大きい。

偶然にも光州事件が起こる前日の5月17日に主人公の祖父が店主である中華料理店「和平飯店」をオープンさせるが、店内では軍人と学生が揉め事を起こしたり、近くの大通りで暴動が起きたり、夜間外出禁止令や戒厳令の放送が流れて店が営業出来なかったり、とにかく光州事件に翻弄されまくる。


これに加えて、主人公のチョルス少年の父は市民のデモ隊に参加していて、軍部から追われたり、またそのことでチョルスの叔父が軍部に捕らわれて厳しい尋問を受けたり、「和平飯店」はどちらかと言うと市民寄りの立場になる。その隣にチョルスが仲良くなる女の子・ヨンヒの母が経営する美容室があるが、このヨンヒの父は軍人なので、ストーリーが進むにつれてヨンヒとチョルスの仲がおかしくなる。このチョルスの不憫な韓国版『小さな恋のメロディ』もわりといい感じだっただけに、彼もまた幼いながら時代に翻弄される。


これまでの『光州5・18』や『タクシー運転手 約束は海を越えて』では光州事件での熾烈な戦いが描かれていたが、『1980 僕たちの光州事件』でもその手のシーンもあるにはあるが比較的少な目で、あくまでも「和平飯店」での親子三代のほのぼのな人情路線+チョルス少年とヨンヒの韓国版『小さな恋のメロディ』が中心。
ん、親子三代に小さな子供まで中華料理店を手伝う…
ってまるで
「渡る世間は鬼ばかり」
ではないか!

そう、『1980 僕たちの光州事件』は
「光州事件」ミーツ「渡鬼」
というありそうでなかった角度での光州事件の映画であり、非常に斬新な韓国の歴史社会派映画である。

まぁ、「光州事件」そのものをより詳しく知りたかったら、『光州5・18』や『タクシー運転手 約束は海を越えて』を見ればいいとなるかな。あと、その前段階に当たる『ユゴ 大統領有故』や『大統領の理髪師』、『KCIA 南山の部長たち』、『ソウルの春』を見ればより本作をとらえることが出来るかな。なので、このどれかを見てから本作を見ることをオススメしたい。


■1980 僕たちの光州事件

監督・脚本:カン・スンヨン/出演:カン・シニル、キム・ギュリ、ペク・ソンヒョン、ハン・スヨン、イ・ジョンウ、チョン・スジン、キム・ミンソ、ソン・ミンジェ
原題:1980/製作国:韓国/製作年:2024年
公式HP:https://klockworx.com/movies/1980/