岸田森の出演映画 その4
もう1回だけ、岸田森である。
73年に入るが、岸田が出演している映画でお蔵入りになってしまったのが「夕映えに明日は消えた」である。原作は笹沢佐俣で、主演は中村敦夫という「木枯し紋次郎」のコンビ。紋次郎が放送中の中、制作され勿論内容も紋次郎を意識したものとなっている。タイトルも紋次郎のサブタイにありそうな感じになっている。ストーリーは大雑把に言えば、中村演じる佐吉と原田芳雄率いる四兄弟との戦いということになるようだ。中村と原田は俳優座を一緒に退団した仲間。で、原田の弟役が岸田森や阿藤海である(もう一人は不明)。顔のつくりから言えば、原田よりも中村と兄弟というほうがしっくりくるけれども。他の出演者はテレサ野田、小野ひずる、内田朝雄、草野大悟、富川澈夫など。小野は「仮面ライダーV3」にヒロイン役で出演していた。余談だが、中村が主役の「おしどり右京捕物車」(74年)に岸田が敵役で登場した時に、その仲間を阿藤や富川が演じていた。富川は岸田と同じ「六月劇場」の出身ということもあり共演も多い。
本作が未公開となった原因については、主演の中村も「わからない」と言っている。プロデューサーだった藤本真澄が気に入らなかったから、という説は事実の一つではあろうが、他にも諸事情があったようだ。「映画論叢」という雑誌で、本作の打ち切り事情について追究した記事があるが、正確な結論は得られていない。ちなみに、後の77年に高知と尼崎でそれぞれ一週間だけ公開されているらしい。
73年、テレビでは円谷プロの特撮ドラマ「ファイヤーマン」にSAFの水島副隊長としてレギュラー出演。劇中で副隊長とは呼ばれていなかった気もするが、ポジション的に二番手なことは間違いない。ここでは隊長役の睦五朗と公私ともに親しくなったようである。
74年の主な映画出演としてはまず「ゴジラ対メカゴジラ」。岸田はゴジラシリーズ初出演である。よりコミカルで子供向けになっていたゴジラシリーズだが、本作では若干の軌道修正が入り、子役俳優が登場しない。
主演は大門正明で、その弟役に青山一也で、ヒロイン役は田島令子だ。大門は「ファイヤーマン」の主役候補に挙がっていたという(実際は誠直也)。青山は東宝製作の特撮「流星人間ゾーン」(73年)の主役である。ちなみに、76年には引退し、家業である海苔専門店を継いだという。田島は71年に松竹から映画デビュー。普通に顔出しも多いのだが、「地上最強の美女バイオニック・ジェミー」の主演声優としても知られ、声優イメージも強い。
本作は沖縄が舞台で田島の役名は金城冴子という。「キンジョウ」でも「カネシロ」でもなく「カナグスク」と読む。また国頭那美(クニガミナミ)という沖縄民謡の歌い手をベルベラ・リーンという人が演じている。ベルベラは本作のみ使用した名前でその正体は台湾人歌手・鄭秀英。当時はプロフィールが公開されておらず、長らく謎の人物として扱われていたようだ。
こうした若手に加え、平田昭彦、小泉博、佐原健二といった東宝特撮映画の常連俳優も出演している。「ファイヤーマン」からも岸田と睦が出演。共に謎めいた人物の役だが、岸田の正体はインターポールの捜査官に対し、睦はブラックホール第三惑星人という宇宙人の地球征服司令官を、その部下を岸田とは文学座の同期で親友である草野大悟が演じている。ちなみに、草野の妻は田島和子で令子ではない。
「血を吸う薔薇」は、血を吸うシリーズの3作目。前作「血を吸う眼」から3年が経過していたが、東宝側の都合などにより一度立ち消えになった企画が再始動した形である。舞台は長野の奥地にある女子短大。
主演は黒沢年男だが、見た目の男臭さとは裏腹にホラーが大の苦手だという。その為、出演を渋っていたのだが、完成品をみないこと等を条件に引き受けたという。他の出演者は望月真理子、太田美緒、麻里ともえ(阿川泰子)、佐々木勝彦、田中邦衛、伊藤雄之助などで吸血鬼は前作に引き続き岸田が担当した。短大の学長夫妻こそが、吸血鬼なのだが学長夫人役は桂木美加。「帰ってきたウルトラマン」でMATの紅一点、丘隊員を演じていた人である。学長夫人などというと年配の人を想像してしまうが、桂木は当時25歳であった。ちなみに桂木は本作の後「ウルトラマンレオ」にゲスト出演をしたのを最後に芸能界から姿を消している。共演していた団次郎も「恐らく結婚されて、引退したのでは」とはっきりとは知らないようだった。
この74年、岸田はテレビではあの「傷だらけの天使」にレギュラー出演。説明不要かと思うが、主演は萩原健一、共演は水谷豊、岸田今日子。従姉妹である岸田今日子との共演はあまりない。ほぼ同時に時代劇「斬り抜ける」がスタートしているが、こちらにも岸田はレギュラー出演。主演は近藤正臣、和泉雅子で他に佐藤慶、火野正平など。「傷だらけ」の亨役は当初、火野正平が予定されていたというのは有名な話だが、この「斬り抜ける」等の出演でスケジュールがとれなくなった為、水谷となった。岸田森は両方にレギュラー出演していたぞ、というのは考えてはいけない。
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投稿を表示貴重な記事ありがとうございます!
お蔵入りの作品、かなり気になる内容ですにね!四兄弟が個性的過ぎて、面白くない訳なさそうなんですが…
ゴジラ界隈、なんでもつと早く岸田さんを起用しなかったのか残念でなりましせんが、まぁ、怪獣を食ってしまいそうな怪優だから仕方ないですかねえ😅
薔薇の、黒沢年男が、ホラー嫌いだから、完成した作品を見ないことをさ出演の条件にしてたとか、知りませんでした!
そんなに嫌わなくても…🤣
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