映画『ビリーバーズ』や『女子高生に殺されたい』の監督を務めた城定秀夫監督と、映画『愛がなんだ』や連続テレビ小説「まんぷく」に出演した乃木坂46の元メンバーで本作『嗤う蟲』主演の深川麻衣に出演決定時の心境や“村”に対する印象を聞いた—

上田：キャスティングの経緯や、出演依頼時の心境をお聞かせください。
城定：深川さんのキャスティングは推薦という形だったので、キャスティング後に深川さんのことについて調べました。アイドルがホラーに出るというのはどこか定番となっている部分はありますが、深川さんは今泉監督の映画とかでよくみていたこともあり、僕の中では映画女優としての認識が強かったです。とはいえ、今回のような役では見たことがないので、ご一緒するのがとても楽しみでした。

上田：本作は新しいヴィレッジ×スリラーの組み合わせに感じました。深川さんは撮影を終えて、如何でしたか？
深川：こういうジャンルの映画は初めてでしたし、怖さだけでなく人間ドラマやエンタメとして楽しめる要素がたくさんあって、そこがこの作品の魅力だと思いました。普段からミステリーやサスペンスなど、謎が明るみになっていく映画や小説も好きでよく見ているので、お話をいただいた時は嬉しかったです。若葉君とは『愛がなんだ』以降2回目の共演で、とても信頼する俳優さんなので安心できた部分もあります。

上田：深川さんのお芝居について、心境の変化を表現することが難しいように感じました。“徐々に環境が変化していく、理解していく怖さ”は、お芝居としては難しかったですか？
深川：お芝居については、前半は特にみなさんのお芝居を受けてリアクションする受け身の状況が多かったので、会話の中でのリアクションや、何かが起こったときの反応を新鮮に受けられるようにしたいと思っていました。撮影の撮り順でシーンが前後する場合もあるのでしっかりと気持ちの起伏が繋がるように、ということは意識していました。

上田：ヴィレッジ(村)がテーマとなっていますが、田舎への印象の変化などはありましたか？
城定：自然に憧れて、のんびり暮らしたいっていう気持ちがあります。しかし、改めて考えると“人間関係の濃さ”みたいなものが村にはある気がします。もともと人間関係、コミュニケーションが苦手な方なので、少し難しそうな気がします。この作品を観ると、村への印象が少し変わる可能性もありますね。特に都会にいると、人との距離感は違いますから。本作は村を中心に描いていますが、こうなるのも“仕方ない”部分もあるので「村にも同情してほしいな」という作りにはなっています。その塩梅がホラーに寄せすぎないというところにも関わってきます。

上田：作品の魅力をお聞かせください。

城定：様々な見方がありますが、“恐怖を感じながら楽しんで観る”作品に仕上げていますので、エンタメとして何も考えず観ていただければ。物語としては夫婦の物語であり、杏奈という一人の女性の物語でもあると思います。母親でもあり、妻でもあり、イラストレーターでもある。杏奈という一人の女性がどう変わっていくかを軸に観るのも一つの魅力です。映画のジャンルに捉われず、“人間”を観てみてください。

深川：冒頭は二人が想像していたスローライフとは違う、何か見えないものがジワジワ身体を囲っていくような感覚が続いていきます。その不穏な雰囲気を、結末に向けてエンタメとして楽しめるような作品になっていると思います。その雰囲気に相反する形で女性の“母の強さ”や、守るものがある“人の強さ”も描かれているので、結末を想像しながら観てもらえたら嬉しいです。

映画『嗤う蟲』
～あらすじ～
田舎暮らしに憧れるイラストレーターの杏奈(深川麻衣)は、脱サラした夫・輝道(若葉竜也)と共に都会を離れ、麻宮村に移住する。麻宮村の村民たちは、自治会長の田久保（田口トモロヲ）のことを過剰なまでに信奉していた。二人は、村民たちの度を越えたおせっかいに辟易しながらも新天地でのスローライフを満喫する。そんな生活のなかで杏奈は、麻宮村の村民のなかには田久保を畏怖する者たちがいる、と不信感を抱くようになっていく。一方、輝道は田久保の仕事を手伝うことになり、麻宮村の隠された＜掟＞を知ってしまう。それでも村八分にされないように、家族のため＜掟＞に身を捧げることに……。

2025年01月24日（金）公開[PG12]
上映時間：99分 / 製作：2024年（日本） / 配給：ショウゲート

（C）2024 映画「嗤う蟲」製作委員会

■監督
城定秀夫

■脚本
内藤瑛亮、城定秀夫

■出演者
深川麻衣
若葉竜也
松浦祐也
片岡礼子
中山功太
杉田かおる
田口トモロヲ
■音楽
ゲイリー芦屋
■ヘアメイク
吉田真佐美
■スタイリング
山口香穂
■公式サイト
https://waraumushi.jp/
■本予告