【本日公休】

2024年9月20日公開/106分/ドラマ

制作国 : 台湾

《STAFF》

監督 : フー・ティエンユー

製作 : ウー・ニェンチェン   ワー・ミンシェン

《CAST》

ルー・シャオフェン（アールイ）

フー・モンボー（チュアン）

アニー・チェン（シン）

ファン・ジーヨウ（リン）

シー・ミンシュアイ（ナン）

チェン・ボーリン（農家の若者）

《STORY》

台中の下町で40年理髪店を営んできた店主のアールイ（ルー・シャオフェン）は、3人の子供たちを一人で育て上げた。

独立した子供たちに時代遅れの店だと言われながらも彼女は一人で店に立ち、常連客相手にはさみを動かす。

ある日、離れた町から店に通ってくれていた常連客のコ先生が病に倒れたと知ったアールイは、「本日公休」の札を店に掲げ、先生が住む町へと車で向かう。

全編を通じて柔らかなノスタルジーを感じさせながらも、家族間に波立つ感情や、"老い”を受け入ていく心情、新たな希望を見出す道程を、リアルで現代的な視点を交えながら繊細に描き出します。

※「本日公休」公式サイト-ザジフィルムズより引用　  https://www.zaziefilms.com/dayoff/

台湾のフー・ティエンユー監督が、現在行われている第37回東京国際映画祭にて「黒澤明賞」を受賞した作品との事で遠出してミニシアターまで行ってきました。

台湾映画をあまり見た事がなかったのですが、日本の映画と変わらないゆったりとした雰囲気で、安心して観れました。

主人公のアールイさんは、3人の子のシングルマザーで理髪店を営んでいます。

カラフルで派手な柄の洋服を着て、髪はおばさんパーマ、ふくよかで逞しい体つきをしていて大きな声で喋りまくる典型的な関西系おばちゃん、それがアールイさんです。

アールイさんの日常はいつもお店にいて、常連客の髪を切り髭を剃る。箒で店を掃除し、タオルを洗濯する。大量の植木に水をやり、子供たちに小言を言う。

いつもそこにいて同じ事を繰り返している母親に、もっと効率の良い商売やロボット掃除機を勧めるニートの息子。

しかし、アールイさんはまったく相手にしません。

そんな何気ない日々の様子がのんびりと流れていきます。

ある日、離れた町から通ってくれていた常連客の"コ先生”が病の床に伏したことを知ったアールイさんは、店に「本日公休」の札を掲げ、古びた愛車でその町へ向かうのですが、急に母親がいなくなったことで家族は大騒ぎに...。

息子の卒業式に出席するため整髪に来た紳士、親に内緒で流行りのヘアスタイルにして欲しいと懇願する中学生、お祝いに産まれたばかりの赤ちゃんの髪を剃りにきた父親..。

たくさんの常連客がいるけれど、コ先生は物言わぬ客でした。だけどコ先生と過ごしてきた時間には、言葉はなくとも深い絆があったのでした。

娘や息子に「こんな理髪店は時代遅れ」と言われても、40年続けた店と常連客を大切に想いアールイさんは、せわしなくも充実した日々を送っています。

こういう母親を題材にした映画と言うのは、家族に人生を捧げて自分は質素な生活をしていて楽しみなどもあまりないキャラクターになりがちだと思いますが、アールイさんはとても楽しそうです。

アールイさんは車の運転が下手で（特に駐車）、膝は痛いけどお寺などのパワースポット巡りが大好き♪

おばちゃん仲間のグループではリーダー的存在の人気者でした。

元気で可愛らしくて、自分の職業に誇りを持っています。

私も母親で、どちらかといえばアールイさんの立場に近いせいか、彼女の生き方を見ていると「自分もまだまだ頑張らなくては！」と背中を押された気がしました。

この作品は、監督の母親がモデルとなり実家で撮影しています。

もちろん美術部が手を加えていますが、くしやハサミ、ドライヤー、タオルなどは、もとからあったもので、映画に登場する猫も本当に実家にいる猫だそうです。

自分から画面に入ってきて、嬉しそうに行ったり来たりしてる様子がとても自然で可愛いかったです。

アールイさんを演じたルー・シャオフェンさんのハサミ捌きはまるで本物の美容師さんの様で、素人目に見ても丁寧な仕事ぶりにプロ意識を感じました。

そして今作は、ルーさんにとって20年ぶりのスクリーン復帰となりました。長年演じたい作品を探していましたが、これこそ待っていた作品だと思い、出演を決めたそうです。

時系列の撮り方にも工夫がなされていてとても新鮮でしたし、女性監督ならではの繊細な感情表現がすばらしかったです。

久しぶりに良い映画を観たな...と心から思いました。

現在はミニシアターなどで、全国で順次公開されています。

ぜひ皆さんに観てほしいと強く思う作品です！！

※上映スケジュールは冒頭にURL記載の公式サイトをご覧下さい。