創業者エンツォ・フェラーリの苦悩の日々を見る『フェラーリ』
■フェラーリ
《作品データ》
『ヒート』『コラテラル』のマイケル・マン監督が、アダム・ドライバーを主演に迎え、イタリアの自動車メーカーフェラーリ社の創業者エンツォ・フェラーリを描いたドラマ。ブロック・イェーツの「エンツォ・フェラーリ 跳ね馬の肖像」を原作に、59歳のエンツォが、息子を失い私生活が荒れるなか、起死回生をかけて挑んだレース「ミッレミリア」の真相を描く。エンツォの妻役にペネロペ・クルス、愛人役にシャイリーン・ウッドリー、そのほかパトリック・デンプシー、ジャック・オコンネル、サラ・ガドンら実力派が集結。
・2024年7月5日(金)より、TOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー!【PG12】
・上映時間:130分
・配給:キノフィルムズ
【スタッフ】
監督・製作:マイケル・マン/脚本:トロイ・ケネディ・マーティン
【キャスト】
アダム・ドライヴァー、ペネロペ・クルス、シャイリーン・ウッドリー、サラ・ガドン、ガブリエウ・レオーニ、ジャック・オコンネル、パトリック・デンプシー、他
原題:FERRARI/製作国:アメリカ/製作年:2023年
公式HP: https://www.ferrari-movie.jp/
〈『フェラーリ』レビュー〉
「 あれ?フェラーリの映画なら2020年に公開したマット・デイモン主演映画の『フォードvsフェラーリ』があるじゃん」と思いつつも、今回はさらにその少し前の時代のフェラーリ社の創業者エンツォ・フェラーリにスポットを当てたマイケル・マン監督作品『フェラーリ』。カーレース要素をふんだんに盛り込んだ『フォードvsフェラーリ』とは違って、
終始フェラーリ社の危機とエンツォ・フェラーリの苦悩を描いた映画で、リアルなレースシーンもいくつかあり見応えがある。
『フォードvsフェラーリ』よりも6、7年前のカーレース、自動車業界が舞台になっているので、レーシングカーやレーサーの格好も50年代の古いスタイルのものをリアルに再現。特に前半と終盤のレースの事故シーンは圧巻で、死と隣り合わせというのを通り越して、不謹慎ではあるがレーシングカーが鋼鉄の棺桶の様にも見えなくない。一応、フェラーリ社の創業者エンツォ・フェラーリの映画ではあるが、ストーリーの序盤から出てくるレーサーのアルフォンソ・デ・ポルターゴがもう一人の主人公であり、彼の結末を知る者には終始死の影が見え隠れしているように感じられる。
しかしながらレースシーンが多かった『フォードvsフェラーリ』と比べると、エンツォ・フェラーリの家庭の話にもかなりの時間を割いていて、ヒューマンドラマ的な描写が多い。妻ラウラとのいまいち上手くいってない関係や、少し前に若くして病死した息子ディーノへの思いなどもあり、レース映画としてよりもエンツォ・フェラーリの自伝ヒューマンドラマとしての色合いが濃い。
というか、主演のアダム・ドライバーが終始白髪&やや薄めの頭髪の初老メイクであるのと、やたらうつむき加減だったりするので、意識して見て「 あ、これ、アダム・ドライバーなんだ」と改めて認識するぐらい苦悩しまくるエンツォ・フェラーリになりきっている。エンツォ・フェラーリは1898年生まれなのでこの時59歳のエンツォ・フェラーリを演じているが、この頭髪の具合いがよく似せてあり、それっぽく見える。このアダム・ドライバーの老けメイクというか老け演技も見所の一つと言っていい。
それでも異様に生々しいレース事故シーンの凄まじさに引っ張られて、『フォードvsフェラーリ』とはまた違った重厚さがある映画にはなっている。考えてみればマイケル・マンは『フォードvsフェラーリ』の製作総指揮の一人なので、クオリティが高いのも頷ける。
カーレース好きというよりもフェラーリそのものに興味がある方なら見た方がいいかも。