湘南・江ノ島の近く、鵠沼海岸駅を出てわずか5分ほどのところに『シネコヤ』という小さな映画館があります。

この映画館、1スクリーンにわずか22席しかないため土日なんかは事前に予約しておかないと入れないこともしばしば。いわゆるミニシアターなのでIMAXやDolbyシネマのような最先端な映像体験ができるわけでもありませんが、ここでしかできない体験があることは間違いありません。

外観はクリーム色×ブラウンで統一されたレトロ感漂う雰囲気。入り口右側の緑色の枠の中にはその時上映している映画が飾られており、この後観る映画への期待値もブワッと上がります。（入り口から写真を撮る手が止まりません…！）

入り口入ってすぐには、なんとパンコーナー！！神奈川県山北町に工房を持つ自家製天然酵母のDestureーデスチャーさんのパンがずらーっと並んでおり、選んだパンは映画を観ながら食べることができるんです。

私のオススメはレジで頼むことができるフレンチトースト。温かいフレンチトーストの上にはなんとバニラアイスと蜂蜜がトッピングされており、甘いもの好きにはたまらない一品になっています。

店内奥へと進むと、壁一面を埋め尽くすほどの映画に関する本や雑誌、パンフレットが。ここシネコヤさんは本と映画を楽しむことができる場所で、映画が始まるまでの間や映画を観終わってから、ゆっくりと本を読むことができます。

行く度にディスプレイが少しずつ変わっているのですが、私のベストムービー『アメリ』のコーナーが出来ている時もありました。

さてさて、本命の映画に移ります。

映画の上映時間が来るとスタッフの方が順番に2階へと案内してくださいます。階段を登っていくと、階段の途中には『ニュー・シネマ・パラダイス』のコーナーが。

これが映画館！？と初めて訪れた時、かなりびっくりしましたがシアター内にはアンティークのソファやテーブルがずらり。柄や形がどれも違うソファの中からお気に入りの一脚を選んで映画を観ます。（2人掛けのソファもあるので、カップルやお友達と行くと違う楽しさがあったりもします）

ゆっくりとソファに腰を下ろして観れる、映画館の心地よさは、おそらく日本一だと思います。日常に寄り添った映画、社会問題を突きつける映画、切なくて泣ける映画など、様々な作品をこのスクリーンで観ましたが、リラックスした状態で観ると私の心にはいつもよりすーっと自然に入ってくる感じがします。

入り口からツアーのように順番にご紹介してきた『シネコヤ』さんですが、私が1番気に入っているのは人の温かさを感じるところです。

ある時、私が1人で訪れるとスタッフの方が「お一人ですか？」と声をかけてきてくれました。『マイスモールランド』という作品を観るところだったのですが、「もしお時間あれば…」と映画の理解を深めるために知っておいた方がいい情報を教えてくださり、上映後には「いかがでしたか？」と映画の感想を聞いてくださいました。

またある時には映画を観終えて、駅まで向かって歩いていると「あの…」と後ろから自転車で追いかけてきてくれて、私がプレゼントしたイラストのお礼にシネコヤさんの会報をプレゼントしてくれました。

いつ誰にでもこのような対応をしているわけではないとは思いますが、きっと誰もが温かい気持ちになって家路につく映画館が『シネコヤ』さんではないでしょうか。

ぜひ一度足を運んでみてください。