アレが☆パラダイス
2025/08/24 12:16
楽園
吉田修一の短編小説集『犯罪小説集』に収録された「青田Y字路」「万屋善次郎」原作を1つの作品に映画化。監督は「64-ロクヨン-」、「護られなかった者たちへ」の瀬々敬之。
田舎で未解決の幼女誘拐事件が起きる。それから12年後に同じ田舎で新たな事件が発生、容疑者に疑われる青年、誘拐された少女の親友、限界集落で犬と暮らす男性を軸に描くサスペンスミステリー。
映画を観て思ったのは、綾野剛さん演じる外国からやってきた青年を見ていると李相日監督「怒り」(吉田修一・原作)の森山未來さんが演じた青年やポン・ジュノ監督「母なる証明」のウォンビン演じる青年と重なり漠然とした気持ちが最後まで残った。それから佐藤浩市さんが演じる男性が村八分にされ理不尽な扱いを受けていくシーンは、とても胸が苦しくなり息が詰まりそうになった。田舎の村人が集団で人を勝手に決めつけ追い詰めて村八分にしていく様子は、SNSで匿名の集団が個人を追い込んでいく様と変わらない。近年、都会の息苦しさに疲れて田舎暮らしブームなどもあったが、田舎も都会もそれぞれ独特な閉塞感や社会構造が存在しており、ただ環境を変えただけでは空虚感は埋まらない。変えるのは、その時出会った運命の巡り合わせ?と思ったが結局は自分自身なのだろうか?しかし自分自身じゃどうにもならないことが多い。
吉田修一さん原作のサスペンス作品の映画化は、どの監督が撮ってもだいたい面白い作品に仕上がっている。ただのサスペンス映画に留まらず、人間の心の闇や善悪、そして人生についてとても重く深く考えさせられる。しかし扱うテーマがテーマなので素直に面白いと思う感情は、ある意味皮肉になってしまうかもしれない。
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