【Foyer vol.3:CINEMA NEKO】歴史を紡ぎ、物語を映す。半世紀ぶりに街に灯った新たな光
===================
かつて映画の灯が消えた街に、半世紀ぶりに蘇った映画館。
歴史を紡いできた木造建築の温もりと、
最新の設備が織りなす、ここでしか味わえない体験を。
===================
目次
1.東京唯一の木造映画館「CINEMA NEKO」
2.木の温もりを感じるスクリーン
3.映画の余韻に浸る、安らぎのカフェスペース
4.シネマネコを彩る『猫』の魅力
5.映画と人が集う、街の新たな物語
1. 東京唯一の木造映画館「CINEMA NEKO」
東京23区の西方に位置する青梅。多摩川のせせらぎと、山並みに抱かれた穏やかな街は、どこか懐かしいレトロな空気をまとっている。かつては「青梅キネマ」「青梅セントラル劇場」「青梅大映劇場」という3つの映画館が街の娯楽を担い、映画館が姿を消してからも、映画看板師が描く往年の名作の看板が“映画の街”としての記憶をつなぎとめてきた。そんな青梅で半世紀ぶりに映画館が復活を果たした。それが「CINEMA NEKO(シネマネコ)」である。

もともと織物産業で栄えた街の歴史的建造物である国登録有形文化財の「旧都立繊維試験場」が木造の温かさそのままに最新の音響設備を備えて生まれ変わった。歴史の息吹と現代の映画体験が見事に融合した東京唯一の木造の映画館。2021年にはグッドデザイン賞を受賞するなど、専門家からも高い評価を得ている。

映画館を運営する株式会社チャスが営む飲食店「火の鳥」に来店したお客さんの「青梅にも昔は映画館があったのにねぇ。今は街のどこにもないからね。あったら嬉しいんだけどね・・」というぽろっとこぼした一言がシネマネコ誕生のきっかけ。長い間、映画館のない時代が続いた青梅に、エンターテインメントの力で再び賑わいを取り戻そうという、街の歴史を紡いでいく重要な文化拠点として大きな意味を持っている。
2. 木の温もりを感じるスクリーン
東京で唯一の「木造建築×最新設備」というコンセプトの劇場内に足を踏み入れてみると、まず目に飛び込むのは63席のビビットな紫色の座席。フランス製キネット社の椅子は、今はなき新潟県の映画館「十日町シネマパラダイス」から譲り受けたものだ。ひとつひとつの椅子には、映画を愛する人々の想いが宿っている。

座席に着き、ふと上を見上げれば、むき出しの梁が姿を表し、東京ではここでしか見ることの出来ない景色が一面に広がっている。そんな木の温もりを感じながらDolby surroundの全身を包み込むような360度の全方位から届く立体的なサウンドは、唯一無二の映画体験を生み出している。

3. 映画の余韻に浸る、安らぎのカフェスペース
館内併設のカフェで提供されているメニューの数々は、純喫茶にも引けを取らないクオリティで、映画の待ち時間に彩を添えてくれる。

上映作品に関連した本や映画館の名前にちなんだ猫に関連した本など、探索し出したらあっという間に1日が過ぎてしまうバラエティ豊かな書棚も魅力的。

大きな窓から差し込む柔らかな木漏れ日の中、カップから立ち上るコーヒーの香りと共に、これから始まる物語に胸を膨らませたり、鑑賞したばかりの映画の余韻に浸ったり。映画体験をより豊かにしてくれる、温かな空間がここにはある。

4. シネマネコを彩る『猫』の魅力
ここ青梅では至る所に往年の名作を猫でパロディした映画看板が点在している。
青梅では、江戸時代に織られていた絹と木綿を組み合わせた「青梅縞」が青梅市指定有形民俗文化財に登録されており、明治時代初期までこの地域の産業を支えてきた。その青梅縞で用いる絹の元になる蚕の繭を食べるネズミを駆除する猫が、昔から商売繁盛の象徴として伝えられてきた。そういった背景もあり、猫溢れる街となっている。
シネマネコでも名前の通り、猫要素がいくつも散りばめられている。

記念すべきこけら落としには、スタジオジブリの名作『猫の恩返し』を上映。苦労して上映まで漕ぎつけたとのことだが、この話はインタビュー記事にて熱く語っていただいているのでぜひ確認していただきたい。
また、オリジナルキャラクターである金ちゃん銀ちゃんをはじめとする個性的なグッズも充実している。映画の思い出と共に、シネマネコから“猫”を連れて帰ってみてはどうだろう。 オンラインショップはこちら

さらに、毎月2日、12日、22日の「2(ニャン)」がつく日は「ネコデイ」として、鑑賞料金が1200円になる嬉しいサービスも。映画ファンも、猫好きも、きっと癒される。
5. 映画と人が集う、街の新たな物語
青梅の歴史を未来へと紡ぎ、半世紀ぶりに文化の灯をともしたシネマネコは、かつて閉館した映画館たちの想いを引き継いだ、人々が集う憩いの場所。

木の温もりに包まれながら、街の記憶や人とのつながりまでも体感できる。そこで交わされる会話や笑い声は、やがて街の記憶となり、新たな物語として青梅の街に刻まれていく。映画と人、そして街がひとつに結びつく——そんな瞬間が、この小さな映画館には確かに息づいている。
「CINEMA NEKO」
住所: 〒198-0044 東京都青梅市西分町3丁目123 青梅織物工業協同組合敷地内
アクセス: JR青梅線「東青梅駅」より徒歩約7分、JR青梅線「青梅駅」より徒歩約15分
座席数: 63席(フランス、キネット社製の椅子)
営業時間:9:30〜22:00(上映作品により変動あり)/定休日:火曜日
公式HP:https://cinema-neko.com/
__________________________
Foyer|ホワイエ
毎月ひとつの映画館にフォーカスして映画館の魅力を発信
↓最新記事↓
https://community.discas.net/users/rxffcu2lnjtpenpd