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私の好きな映画

はじめ バッジ画像
2024/03/31 12:27

【ネタバレあり】『オッペンハイマー』真実の凝縮と人間の”核”分裂

文字に起こせる気がしませんでした。
決して軽い口調で「この映画、すごかった!」なんて言えない。
だからと言って、それを残さないのも違う。と自分自身はそう思いました。

(c)Universal Pictures. All Rights Reserved.

自分の解釈と作品に対して感じた事を今、その瞬間に、逃げることなく、ちゃんと自分の頭で考えて記録に残しておくべき作品である事は間違いないありません。共感できるかできないか、正解不正解は無い。あくまで一鑑賞者としての気づきや受け取り方として、読んで頂ければ嬉しいです。

公開日当日、朝8時20分。グランドシネマサンシャイン池袋のシアター12。満席。


【目次】
前半『感情』と後半『知的な問い』の2部構成
やはり"時間(時)"が軸だったのか
トリニティ実験(三位一体)はオマージュ


そんなお話の前に、まず頭に入れておいて欲しい情報を。(今回は特に)

ーーーあらすじーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第2次世界大戦中、物理学者のロバート・オッペンハイマーはマンハッタン計画にて、原爆開発プロジェクトの委員長に任命される。しかし、実験で原爆の威力を目の当たりにし、さらには実戦で投下され、恐るべき大量破壊兵器を生み出してしまったオッペンハイマーは、さらなる威力をもった水素爆弾の開発に反対するが一

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〜予備知識〜
ノンフィクション「『原爆の父』と呼ばれた男の栄光と悲劇」をベースに作られた作品で、隠れ豪華キャストは超絶驚きます。あんな人まで?!出ているので、有名キャスト探しをするのも楽しい。

さぁ、、、ここからはパンフレットは読まずに書き殴ります。
 


前半『感情』と後半『知的な問い』の2部構成


(c)Universal Pictures. All Rights Reserved.

前半はイメージ通り、“原子爆弾”制作の前後。
後半は”時の人”になってから起こった人間の紛紜。
監督の言葉を借りれば、『感情』で映画を理解する部分と『知的な問い』に対する構成だ。

核融合や原子の凝縮と分裂をオッペンハイマーの『感情』と掛け合わせて表現している部分や、気候(雨や嵐)から核の脅威をインスピレーションできるように作られているのはおなじみのノーラン鬼才の表現方法を彷彿させる。そして、核爆弾の破壊力を映像と音響で感じさせる演出は、IMAXとのベストタッグと言わざるを得ないほど心に緊張が走った。

『知的な問い』については、ノーラン監督の難解さと言うべき、本当の真実が語られた部分。浅はかで表層的な歴史の知識しかない私にとっては理解が困難だった。かつ時系列も混在している連続性のあるシーンが多々見受けられたので、ここは歴史的背景やパンフレットの解説を読んで、しっかり自分の中に刻むべきだと感じた。映画の内容を一心に信じて良いものではないと心半分に、自ら学んで考えを取り入れていく必要がある。
 


やはり"時間(時)"が軸だったのか


(c)Universal Pictures. All Rights Reserved.

今までのノーラン監督の映画からして、やはり『時間』という概念は切っても切り離せない。本作はいわば「よ!これがノーラン節映画!」という奇想天外で創造の世界観が繰り広げられた作品ではないことは、鑑賞した方は一目瞭然。但し、どこかで『時間(時)』についての意識が心の奥底にある、と信じてこの映画の解釈をしてみた。

〇ナチス・ロシアと核実験成功の”時間”競争
〇広島・長崎のあの日から”時”が止まってしまっている事実
〇アインシュタインの相対性理論
〇「あの”時”の」女性関係を引きずっている未練
〇オッペンハイマーが実験に成功した"事実"を作った直後の"時"の止まり
〇原子爆弾の研究に関わった人を調べ上げる"時系列"

あくまで私が感じた『時間(時)』との関係ではあるが、本当かどうかわ分からない。今までのノーラン監督の作品を観ている人間からすると「時間との関係はこれなのかな?」と思いたくなっている節もある。一度の鑑賞では部分的な描写しか覚えられていないが、少なくともこのシーンでは『時間(時)』を感じさせざるを得ない。僕自身の中ではとても納得がいくノーラン節だったと落とし込んだ。


トリニティ実験(三位一体)はオマージュ


アメリカで行われた人類最初の核実験をトリニティ実験と言い、"三位一体"とも言われている。このトリニティの意味はアメリカの川や山の名前で良くある名前から、実験など悟られない(バレない)ように付けた名前のようだが、僕はその意味だけではないと受け取った。

【三位一体】研究者、軍人、原子力委員会や政府

この3つの分野の人間が携わって作り上げた実験、すなわちトリニティ"三位一体"であると受け取った。あくまで個人的な意見ですが、後半で怒涛の三者三様の入り乱れた関係はこの言葉に集約されている気がしてならない。

そして、後半の部分についてはこの歴史を表層的な事実しか捉えられていなかった私には簡単に理解できず、「何が本当なんだ...」と更なる暗闇の穴に吸い込まれる感覚だった。誰もが事実を発しているようで、誰もが正しい行いをしたような発言をして。核爆弾を落とした事実が一気に吹き飛んでしまうほどの、論争の嵐に日本人である立場が放っておかれているようにも感じた。正直な意見として、もっと”核爆弾を日本に落としたこと”にフォーカスされると思い込んでいただけに呆気に取られた。「彼らにとって大事なこと、起こした出来事はその程度だったのか...?」と。3時間の映画に凝縮できることなんてしれていて、全て真実を描けるものではないとは分かってはいるが後半は苦しかったのは事実だ。


歓喜と悲鳴の共存


(c)Universal Pictures. All Rights Reserved.

僕は聴こえました、感じました。
そうノーラン監督に伝えたいのは『オッペンハイマー演説後、賞賛』のシーンでした。

多くのアメリカ国民から足の地鳴らしが聞こえ、その後賞賛を浴びるあのシーンでは喜びと悲しみが同時に表現されていることが明らかだった。

〇笑顔溢れる国民⇔皮膚がただれた女性
〇大勢の歓喜が溢れる会場⇔遠くの方で悲鳴も聞こえている
〇嬉し涙で抱き合い、座り込む男女⇔死者に悲しむ男女
〇窓越しに盛り上がっている国民の影⇔火災や被爆に悶える被害者の影
〇歓喜で酒の飲み過ぎで嘔吐する人間⇔爆弾の影響で嘔吐する犠牲者

オッペンハイマー自身があのシーンで終始笑顔だったら、上記のようなシーンを彷彿させることはなかったが、周りの声が聞こえなくなって、世界が光に包まれた後の表情は広島や長崎の光景を目の当たりにした表情であることが分かる。責任や現実を突きつけられた感情と表情が主演男優賞そのものだった。

ノーラン監督のインタビューでは「被爆者の女性を演じているのは私の娘だ」と公言している。本作を制作する上で、他人事ではなく自分事として捉えるためにもそういった計らいをしているところはノーラン監督の意識のすごさだと実感した。

これら全て書けるだけ書いてみたものの、真実かどうか分からない部分も多々あるため未だに不安もある。しかし、これを誰かが読んだ時に「気づきや発見」に繋がって、考えるキッカケの一歩になれば私として嬉しい限りです。少なくとも、自分自身の学びになったことは確かです。

最後に...クリストファー・ノーラン大好きのシネマニスト"岡ちゃん"の記事が楽しみでなりません。

映画イベント主催"映画を観ない、映画交流会" / 次回4月27日(土)13:00~15:00開催

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6 件の返信 (新着順)

はじめさーん!
こちらでもコラム拝見させていただきましたが読み入ってしまいました✨
オッペンハイマ―演説後の賞賛に関してはなるほどと気づかされました
描写の対比や自分の娘を登場させている計らいに関してもさすがノーランですよね👀👏


はじめ バッジ画像
2024/04/06 20:35

エリオさん、ありがとうございます😊賞賛の声の奥から悲鳴が聞こえてなかったら、そんな捉え方ができなかった気がします。(幻聴じゃなければ良いのですが笑)この作品を作る事でどういう反響があるかノーランも予想して、そういう配慮をしたのかもしれませんね😌やはりさすがです✨

じゅーん バッジ画像
2024/04/06 11:46

私もあの吐いてる男性はもう、被爆者にしか見えなかったです。
他にもそこまで対比させていたとは。苦しくなるけど、また観たくさせるのが、ノーラン作品ですね。
私もこの作品がキッカケで時代背景や冷戦突入の事を調べたので、非常に勉強になり良い経験になりました。日本人として欠如した部分を多少補たかな?と。


はじめ バッジ画像
2024/04/06 15:19

あくまで僕自身が捉えた印象だったので、何となくそこまで目に映りましたね〜。映画を観て、その作品の背景や歴史について考えるキッカケになるのは新鮮でしたね☺️本作はそれぐらい正面から向きあわないといけない気がしました😌

そぜシネマ
2024/04/01 18:54

ようやくみなさんのレビュー&コラムをみにいけます😂。はじめさんの視点共感多々ありです!トリニティのくだりはなるほどーと。

ノーラン娘の登場シーンは恐らく実際に見ていないアメリカ人は被曝をあの様な綺麗なイメージを持たれているとオッペンハイマー自身の想像を通して見せてくれましたね。


はじめ バッジ画像
2024/04/01 23:13

ほんと、自分の言葉で吐き出せたから見に行ける感じがします(笑)
逆にあのシーンを描きすぎてしまうと、オッペンハイマー目線ではなくなりますからね!そういう話をしているとまた書きたいことが蘇ってきますね〜

ツヨ
2024/03/31 19:22

はじめさんが一回見ただけでそこまで気づきや発見されたのが凄すぎる。時間(時)の気付きやオッペンハイマーの演説後の気付きはどれも頷きながら読まさせてもらいました👏自分はストーリーを見るだけで精一杯でしたので はじめさんみたいにそういう目線で映画を見れるようになりたいな✨


はじめ バッジ画像
2024/04/01 08:47

読んで頂き、ありがとうございます...!!この解釈が合っているかは、みんなでも話し合って、さまざまな意見を聞きたいところでもあります(笑)個人的には隠れ大物キャストであるあの大統領、彼が出た瞬間「マジか...!!」って小さい声が出てしまいました笑

飛べない魔女
2024/03/31 17:45

私も本日観てきました。凄い映画だった。。。とやはり言わずにはいられません。
言葉や文字にするのが難しいです。今はまだ書けそうにありません。
はじめさんのコラムで、頭の中が大分整理された気がします。
ノーラン監督はやはり凄い人だ、と改めて思いました。


はじめ バッジ画像
2024/04/01 08:50

おっしゃる通りで文字や言葉で伝えるのが何とも難しい映画だった気がします。軽く「オッペンハイマーどうだった?」って聞かれるのが一番答えづらいですよね😅まだまだノーランを大解剖してくれるシネマニストがいるので、僕も楽しみにしているところです✨

かこ
2024/03/31 13:18

朝イチ上映で満席とは!さすが話題の映画🔥
はじめさんの記事、すごく納得しました!やはりノーラン作品は時間の分割がキーポイントなのかもしれませんね🤩👍
わたしは歴史的背景も入れる予定なので、間違えないように色々調べてる最中(インスタで合ってる思うけど)終わったら書きます😊


はじめ バッジ画像
2024/04/01 08:53

朝イチでアクセス全然繋がらなくて、本当はプレミアムシートにしたかったのですがもう埋まってました(笑)ちなみに岡ちゃんは20時のグランドシート取ってました🤣そうなんです、歴史的背景が僕はまだまだ調べられていないので、みなさんの意見をもっと取り入れて吸収したいと思っています😌かこさんの記事はものすごく上手くまとめられているので、とても気になっています🤩