「12.12軍事反乱」を見事に描いた韓国近代史の重要作『ソウルの春』
■ソウルの春
《作品データ》
1979年の韓国民主主義化をついえさせた実在の事件を基にフィクションを交えながら映画化した大作。韓国で2023年の観客動員数第1位となる大ヒットを記録した。
独裁者と言われた韓国大統領が側近に暗殺され、国中に衝撃が走るなか、暗殺事件の合同捜査本部長に就任したチョン・ドゥグァン保安司令官は新たな独裁者になるべく、陸軍内の秘密組織「ハナ会」の将校たちを率いて12月12日にクーデターを決行する。政治的な欲がない軍人の首都警備司令官イ・テシンは、信念に基づいてチョン・ドゥグァンの暴走を阻止するべく立ち上がるが……。ファン・ジョンミンとチョン・ウソンの主演ふたり、キム・ソンス監督の「アシュラ」の座組が再結集した。
・2024年8月23日(金)より、新宿バルト9他全国ロードショー!
・上映時間:142分
・配給:クロックワークス
【スタッフ】
監督・脚本:キム・ソンス/脚本:ホン・インピョ、ホン・ウォンチャン、イ・ヨンジョン
【キャスト】
ファン・ジョンミン、チョン・ウソン、イ・ソンミン、パク・ヘジュン、キム・ソンギュン、チョン・マンシク、チョン・ヘイン、イ・ジュニョク、他
原題:12.12: THE DAY/製作国:韓国/製作年:2023年
公式HP: https://klockworx-asia.com/seoul/
〈『ソウルの春』レビュー〉
予告編やフライヤーから髪を薄くして温水洋一みたいになったファン・ジョンミンを見る映画かなぐらいに思って見たファン・ジョンミン主演映画『ソウルの春』。1979年の韓国大統領暗殺事件以後に起きた反乱軍のクーデターを映画化した作品で、
その前を描いた『KCIA 南山の部長たち』、『ユゴ 大統領有故』、その後を描いた『ペパーミント・キャンディー』、『光州5・18』、『タクシー運転手 約束は海を越えて』、『1987、ある闘いの真実』に繋がると思うと胸が熱くなる。
これまでに『KCIA 南山の部長たち』、『ユゴ 大統領有故』、あと『大統領の理髪師』など、1979年10月26日に起きた「朴正煕暗殺事件」はあるのに、『光州5・18』より前の「ソウルの春」を描いた作品はないな、と常々思っていたが、ようやくその間に起きたと言われた1979年12月12日の「粛軍クーデター」、あるいは「12.12軍事反乱」と言われるクーデターを軸にし、その後の光州事件や『1987、ある闘いの真実』までの韓国を作ってしまった、その根本を見る映画である。
そのためにファン・ジョンミンが演じるチョン・ドゥグァン目線の物語にしながら、参謀総長との対立や12月12日に反乱軍鎮圧にあたったイ・テンシとの対峙もしっかりと描いている。特に12月12日の参謀総長襲撃やその直後の反乱軍鎮圧のリアルタイム演出は圧巻で、クーデターを見事に描いている。その一つの鍵として、その前にチョン・ドゥグァンが自宅で囲碁をしているシーンがあるが、反乱軍鎮圧の対処でも一つだけ完璧に押さえたものがあり、それがその後の結果に結びつき、まるで囲碁の決定的な一手を打ったかのように重なる。
ファン・ジョンミンが演じるチョン・ドゥグァンはカリスマ性がありながらも人間臭さと親しみやすさを見せる場面もあり、クーデターを起こした張本人の意外な一面が垣間見える。
個人的に『KCIA 南山の部長たち』や『光州5・18』で韓国の近代史に興味はあったが、その間の「ソウルの春」と呼ばれたこの時期の作品を見たくはあったので、ようやく見たいものが見れた気分である。
この辺りの韓国が分からない方は『KCIA 南山の部長たち』と『光州5・18』を見て事前に周辺の出来事を頭に入れてから見た方がいいかな。