
新しいクィアジャンル誕生
痛々しくも切ない。

監・脚本:サム・H・フリーマン、ン・チュンピン
出演:ネイサン・スチュワート=ジャレット、ジョージ・マッケイ
2023年/イギリス/98分/レイティングR18+
ロンドンのナイトクラブ。ドラァグクイーンのジュールズ(ネイサン・スチュアート)ある晩、タトゥーだらけの男プレストン(ジョージ・マッケイ)らにフルボッコにされる。

ショックのあまり、舞台に上がれなくなってしまい、部屋でゲームの毎日で引きこもってしまう。しかし、あるゲイの出会い場(ハッテン場)でまさかの再会を果たす。だがジュールズはスッピンだったので、プレストンは気付かない。
彼の秘密
ワルの中で男らしさに竿立てるプレストン。実は彼もクィアなのだ。

しかし、それを隠してストレートであるように振る舞い、なんならジュールズ達を蔑むように暴行した。だが最初からプレストンは、ジュールズが好みだった。ドラァグクイーンの姿ではあったが一目惚れしたからジッと見ていたんだし。そこから単純な身体のカンケイが始まるのかと思いきや、プレストンは馴染みのレストランへ連れて行く。

そこでのメニューの頼み方とかちょっとカッコいい。なんなら好き。女の私からすれば『チッ、クィアかよ!』って諦めなきゃならないやつ。お互いにやり取りしながらも距離を縮めた中で、ある日ジュールズが最中に携帯で録画している事に驚くプレストン。驚いて再び暴力を振るう勢いだったのだが、ここで彼に変化がある。それはジュールズも初めて彼の心に触った感じ。その後のセックスは初めてキスもしてたし、明らかにラブパワーバランスの変化がある。
逆転する立場
心のつながりがなければ、ただのケツの穴。とはよく言ったものだわ。プレストンのワル仲間とクラブへ行った際、2人の立場が逆転したのが更に明らかなものとなる。完全にプレストンは、ジュールズに堕ちた。

今まで猛犬だったプレストンの目が仔犬の目に変わる。この繊細な変化を実に見事なまでに演じており、思わずキュンとしてしまう。
ルームシェアする友達にジュールズは言う。
『フラストレーション、困惑、自己嫌悪』この自己嫌悪の意味が明らかになる。
ヘイトクライムリベンジ
オラついてギラギラ男らしさから、一転子犬のような目になるプレストン。彼は、自分を押し殺して自分と同じ人達を憎むことで身を守って生きてきた。それでも時間を掛けて誰かに惹かれ、優しい一面をみせていく。それだけに、最後の仕打ちに打ちのめされる様子は、少なからずこちらも思わず貰い泣き。あぁ、可哀想に。

逆に怯えて震えまくっていたにも関わらず、実は胸の奥に牙を剥いて様子を伺っていたジュールズ。単純な男女の復讐はありますが、クィアの中での物語は初めての作品。ちなみに私の中で男女の復讐ものNo.1は『オールドボーイ』

トラウマ級に凄い。ハリウッドでもリメイクされてるが、私はオリジナル韓国作品を激推しします。クィアの世界でも様々なリベンジものが出てくると、人の見えない部分が露呈して複雑な彼らを知る一端になるのかも。
クィアの細分化について。同性を好きでも自分の容姿をどうしたいのか、体はそのままでカミングアウトもしない、社会的には男のまま。しかもプレストンのように自分の立場を維持するために、ヘイトクライムにすら発展させてしまう人もいる事に、より彼らの置かれた状況の複雑さを感じる。その辺を上手く描いた秀作なのは間違いない。


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投稿を表示この映画、本当に良かった!大好き‼︎
円盤はほとんど買わない私だけと、これは欲しいと思った🤩🔥