先日試写会にて鑑賞したこの作品は、

ものすごく刺激的で、それでいてとてつもなく本物。

そして年齢や、自認するジェンダーによって突き刺さる場面が違うだろう。

 

『HOW TO HAVE SEX』

【あらすじ】

タラ（ミア・マッケンナ＝ブルース）、スカイ（ララ・ピーク）、エム（エンヴァ・ルイス）の３人は、卒業旅行の締めくくりに、パーティーが盛んなギリシャ・クレタ島のリゾート地、マリアに降り立つ。自分だけがバージンで、 居ても立ってもいられないタラ。初体験というミッションを果たすべく焦る彼女を尻目に、親友たちはお節介な混乱を招いてばかり。タラは、バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、一人酔っぱらい、彷徨っていた。そんな中、ホテルの隣室の少年達と出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くのだが――。
 

すごく刺激的なタイトルに、観る前は、この作品に私は感情移入できるだろうか。

そんな思いを抱いていましたが、そんな不安なんて最初からなかったかのように、

この作品は私の心を動かし、ラストにはなんとも言えない感情に涙が自然と流れていました。

クラブの、ギラギラした少し危険な香りが漂うハイテンションな空気感。

10代という若さゆえの危なかしさや、

その一瞬の快楽のため自分を満たすために全力な姿。
 

体の中がほぼアルコールなのでは？と思うほど、朝から夜明けまで飲み、騒ぎ狂う。

大人になれば「何を考えていたんだろう？」と恥ずかしくて蓋をしたくなるような、

そんな時間が詰め込まれている。

でもこの作品の伝えたいことはとても道徳的で胸が痛くなるほどだ。

あんなに楽しかったはずなのに、

残ったのは、言葉では言い表せないような虚無感や心の痛み、そして違和感と

これから襲いかかってくる現実と不安。
 

私に残ったもの。それはいったいなんだろう。
 

自分が何者なのかさえわからなくなるような、

まるで世界で自分だけ取り残されてしまったような感覚。

みんなは前に進んでいるのに、自分は何も変わらない、マイナスにすら感じる。
 

人生で一度しかない初体験も、体験したら全てのわたしの人生まで変わるんじゃないか？

それくらいのキラキラした思い描いていたようなものとは現実はかけ離れていて、

それでも元には戻すことの出来ない苦しさや、

10代の性に対する怖さが描かれている。
 

自分の身体は自分しか大切に出来ない。

でもそれは歳を重ねた今だからこそわかることのような気がする。

そして友人の間での嫉妬や、

違和感を感じていても、それでも言えずに隣に居続けるリアルさが

観ていてとても苦しかった。
 

こんなギラギラした経験はなくとも、10代のタラと年代が違ったとしても、

観ているこちら側も、きっとどこか人生の中で経験してきたこととリンクするのでは。

この作品を通して、性に対して改めて考えさせられるはずだ。

そしてこの作品は、苦しさだけではなく、優しさも帯びている。

タラが身体も、心も、痛みを感じたからこその、人生においてのステップアップ。

観た後にいろんな人と語り合いたくなるような、そんな作品です。ぜひ。
 

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7 月 19 日（金）よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋、
シネマート新宿、アップリンク吉祥寺ほか全国公開

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©BALLOONHEAVEN, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, 
THE BRITISH FILM INSTITUTE 2023

配給：カルチュア・パブリッシャーズ
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