米国アカデミー賞5部門に輝く刑事映画の白眉
「フレンチ・コネクション」(1971)

Photo: 20th Century Fox Film Corp.(via Getty Images)
物語の分類としては勿論、俳優の演じる職種から見ても「刑事もの」は非常にポピュラーだが、作品賞と主演男優賞の同時受賞と云う離れ業をやってのけたコップ系フィルムとなれば米国アカデミー賞の長い歴史を紐解いても(今のところ)「フレンチ・コネクション」以外には存在しない
本作がプロデュースされた70年代初めの米国は泥沼化の一途を辿るヴェトナム戦争を始め様々な問題を抱えておりまさに混沌の渦中にあった。その顕著なものに人種不問の幅広い層へおける麻薬汚染が挙げられよう。劇中麻薬取引の温床として黒人酒場の客たちを摘発する場面は公民権運動やブラックパワー運動を通じ善くも悪くも黒人が白人社会へ進出してきた当時の世相を窺わせる。ヘロイン密売で富を築くフランク・ルーカス※がニューヨークで暗躍したのも丁度この頃だ
※リドリー・スコット「アメリカン・ギャングスター」ではデンゼル・ワシントンがルーカス役
ジーン・ハックマン扮する刑事ジミー・ドイル(愛称ポパイ)の人物像が興味深い。彼の「正義感に溢れ喧嘩早い」江戸っ子風気質から推察すると映画の舞台たる下町ブルックリン出身に思えなくもないが、そうした熱い一途な部分は警察官として正作用する反面、ともすると冷静さを失わせることにもなるわけで、それが結果的にあのラストシーンへ繋がったようにも感じられる
惜しくも撮影賞受賞には至らなかったけれどもオーウェン・ロイズマンの担ったカメラワークが抜群に良い。被疑者が食事をするレストランの窓越しに通りで見張るドイルの姿をロングで捉えたショットなどは惚れ惚れする。「フレンチ・コネクション」の仕上がりが或る種ドキュメンタリーに近いのは俳優の動きを絶妙な間合いで的確に収めた彼の仕事によるところが大きいだろう
兎角「刑事もの」はアクションに頼り切った中身の乏しい作品に成りがちだがこの映画は細部にまで拘り丁寧に作られた印象が強く作品賞も納得の出来栄え。魅力は有名な追跡シーンだけにあらず
最後に、今回「スケアクロウ」と「フレンチ・コネクション」を続けて鑑賞し改めてジーン・ハックマンの素晴らしさを実感した。ここに謹んで哀悼の意を表したい
【★★★★★★★★★☆】
(2025-14)
第44回(1972年)アカデミー賞作品賞、監督賞、主演男優賞、脚色賞、編集賞受賞
Cover photo: via IMDb https://www.imdb.com/title/tt0067116/mediaviewer/rm2367927041
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投稿を表示型破りな刑事を演じたジーン・ハックマンの演技がよかったですね。高架下のカーチェイスもよかったですね。
フレンチ・コネクションというカクテルがあり、映画のシーンを想い浮かべながら鑑賞したいですね。