DISCASレビュー

k.a
2026/01/23 13:04

ゲティ家の身代金

『ゲティ家の身代金』(原題: All the Money in the World)は、私にとってリドリー・スコット監督の渋い職人芸が光る、静かに胸を抉る実話ベースのクライムドラマで、何度観ても「お金の呪い」が怖くなる作品です。2017年製作(日本公開2018年)の映画で、1973年に実際に起きた石油王ジャン・ポール・ゲティの孫(ジョン・ポール・ゲティ3世)の誘拐事件を基に描かれています。主演はクリストファー・プラマー(ケヴィン・スペイシー降板後の緊急撮り直しで彼が代役)、ミシェル・ウィリアムズ、マーク・ウォールバーグ。

物語の中心は、16歳の少年ポールがローマで誘拐され、身代金1700万ドル(当時)を要求される中、祖父ゲティ(プラマー)が「一銭も払わない」と頑なに拒否する姿。ゲティは世界一の富豪なのに、ケチで冷徹で、家族さえ「投資」としてしか見ていない。プラマーの演技がもう恐ろしくて、穏やかな口調で「お金は命より大事」みたいなことを淡々と言う姿に、背筋が凍るんですよね。ミシェル・ウィリアムズ演じる母親ゲイルの必死の交渉と、息子を救おうとする母の強さが切なくて、観てるこっちまで息苦しくなる。マーク・ウォールバーグの交渉人チェイスも、地味だけど頼もしくて、凸凹コンビの緊張感がいい味出してる。

一番心に残るのは、ゲティの孤独と狂気。豪邸に囲まれながら、誰も本当の意味で愛さない・愛されない男の空虚さが、静かなホラーみたいに描かれてる。映画は「金持ちは金に縛られる」っていうテーマを、容赦なく突きつけてくる。誘拐犯たちの描写も生々しくて、ただの悪党じゃなく、金に困った人間の愚かさが浮き彫り。クライマックスの解決は淡々と進むけど、それが逆に現実の残酷さを強調してて、観終わったあとしばらく放心状態になるんです。

スコットの演出も素晴らしい。1970年代のローマやロンドンの空気感、暗い色調、緊迫した会話劇が、派手さはないけど深く刺さる。ケヴィン・スペイシー撮り直しのエピソードは有名だけど、プラマーが完璧にハマってて、むしろ「これでよかった」って思うレベル。実話の結末を知ってる人でも、感情が揺さぶられる。

 

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1 件の返信 (新着順)
ラフ
2026/01/25 08:33

欲を追求しても寂しいですね。