DISCASレビュー

田舎の町で女子高生が殺害される悲惨な事件が発生する。知的障害を持つ息子が殺人容疑で逮捕されるが、息子の母親は絶対無実だと信じ刑事どころか誰も信じない。別の真犯人がいると確信した母親は一人で犯人を探し出す。そして彼女は常軌を逸した自らの信念と向き合うことになるが…

ポンジュノの脂がノッていた頃の作品。オープニングからエンディングまで脚本・演出すべてが作り込まれている傑作サスペンス。韓国のキムタクと言われた人気絶頂期のウォンビンが知的障害の息子を演じ、優しく暖かい母親役を演じてきて「国民の母」と呼ばれ親しまれてきたキム・ヘジャが狂気じみた母親を演じるという今までのイメージをぶち壊したキャスティングなのがまた好印象。

黒澤清監督を彷彿とさせる薄気味悪くジメっと陰鬱な雰囲気を漂わせ、少しも明るい雰囲気を感じないのが気味悪くて素晴らしかった。音楽を担当したのは自分の大好きな映画作品「箪笥」のイ・ビョンウ。「箪笥」の時に感じた何ともいえない物哀しさと寂れた雰囲気が今作でも堪能できたのは思わぬ収穫でした。映画史に残る名ラストシーンに美しく絡み合うサウンドを是非堪能してほしいです。