ちょっとした意外性と背伸びのモダンさが織りなすトレンディオムニバススリラー『ニューノーマル』
■ニューノーマル
《作品データ》
『連理の枝』や『ハッピーログイン』のチェ・ジウ主演のオムニバススリラー!マンションで一人暮らしをしているヒョンジュンの元に作業員風の男が火災報知器の点検としてヒョンジュンの部屋に入り、点検をする。その前日、ヒョンスはマッチングアプリで交際相手を探していたが、アプリで示したのは意外な人物だった。ヒョンジュン役をチェ・ジウが演じ、他イ・ユミ、チェ・ミンホ、ピョ・ジフン、ハ・ダイン、チョン・ドンウォンが出演。
・新宿ピカデリー他全国ロードショー中!
・上映時間:113
・配給:AMGエンタテインメント
【スタッフ】
監督・脚本:チョン・ボムシク
【キャスト】
チェ・ジウ、イ・ユミ、チェ・ミンホ、ピョ・ジフン、ハ・ダイン、チョン・ドンウォン
・公式HP:https://newnormal-movie.jp/
〈『ニューノーマル』レビュー〉
5年前に公開した韓国のホラー映画『コンジアム』を手掛けたチョン・ボムシク監督の新作スリラー映画『ニューノーマル』。全6章のオムニバス形式で、6人の違ったエピソードを見せながら、一部のキャラをリンクさせる形でスリラー、サスペンスを見せる。どのエピソードにも捻りがあり退屈はしないが、章単位で切っている佳作を1つの映画として考えても全体的には佳作のままの印象。
一人暮らしのOL、車椅子の老婆を助ける中学生、マッチングアプリを楽しむ女性、自販機の受け取り口から謎の手紙を見つける男性、マンションの隣人に住む美女を除く男性、深夜のコンビニでバイトをする女性、といった6つの全く違うエピソードを見せ、場所は同じソウルでどれも展開に捻りを効かせたスリラーという共通点がある。その中でわずかにエピソードをまたぐ人物もいるので、そこからストーリーのつながりが見える。
その中で、4章の「今、会いにゆきます」での数十〜数百歩間隔でそれぞれ手紙を見つけて指示通りに動くサマはジャン=ピエール・ジュネ監督作品の『アメリ』やジム・ジャームッシュ監督作品の『リミッツ・オブ・コントロール』で見られたような動きだし、5章の隣に住む美女をストーキングする男の美女への眼差しはジュゼッペ・トルナトーレ監督作品の『マレーナ』を彷彿とさせるものがあるなど、それが正解ではないかもしれないがそう見て楽しめる。そう思わせる要因として3章のタイトルの「殺しのドレス」はブライアン・デ・パルマ監督の名作のタイトルだし、4章の「今、会いにゆきます」は竹内結子と中村獅童W主演、土井裕泰監督作品の『いま、会いにゆきます』とダブらせてるタイトルだから、自然と「他にもオマージュがあるかも」と思わせる流れになっている。
『コンジアム』の時も思ったがチョン・ボムシク監督はパソコン、スマホやスマホアプリを使うのが非常に上手い。それと、マンションのシーンもしかりだが、全体的にモダンな室内を見せながらも、裏路地やマンションの外側は韓国の土着臭が残っていて、今の韓国らしさはひしひしと感じられる。それは建物だけでなく食べ物もキムチチゲやサムゲタンとかマッコリではなく(トッポッキというワードは出てきたが)、カフェのお洒落なものだったり、スパゲッティだったり、非韓国的なものが意識的に出てきている。6章のコンビニでのタバコの銘柄もエッセやドウォン、レゾンとかではなくてわざわざマルボロを頼んだり、前の週はダンヒルを買ってたというセリフがあったり、ここでも意識的なものが伺える。
ただ、こうしたモダンさに若干背伸びというかぎこちなさが感じられる。日本が昭和から平成になったばかりの、平成一ケタの頃のトレンディドラマのような、そういう背伸び感が感じられた。
予想の範疇であるがちょっとした意外性と背伸びのモダンさから韓国映画にしては新しいノーマル=トレンディであることは間違いない。どのエピソードも飛び抜けてはいないけど平均的に佳作ではあるので、韓国のどぎついスリラーやサスペンスが好きなら一見の価値あり。