H.G.ウェルズのSF月世界探検
H.G.ウェルズのSF月世界探検
1964年 イギリス 劇場未公開
スタッフ 監督:ネイザン・ジュラン 製作:チャールズ・H・シニア 脚本:ナイジェル・ニール、
ジャン・リード 撮影:ウィルキー・クーパー 音楽:ローリー・ジョンソン
SFX:レイ・ハリーハウゼン 原作:H・G・ウェルズ
キャスト エドワード・ジャッド、マーサ・ハイヤー、ライオネル・ジェフリーズ、ノーマン・バード
、マイルズ・メイルソン、ピーター・フィンチ、ヒュー・マクダーモット ほか
1964年、世界で初めての月探査船が国連によって打ち上げられるが、人類初であるはずの月面着陸の先に、英国国旗とともに”ヴィクトリア女王に栄光あれ”、”キャサリン・カレンダー、1899年”と書かれたメモを発見。その報告で調査を開始した国連の調査団は、”キャサリン”の関係者アーノルドがいる老人施設を訪ね、そこで彼から長い間秘められていた驚くべき真実を告げられる。1899年、借金を抱えて逃げ回っていたアーノルド(エドワード・ジャッド)は、片田舎のコテージに恋人のキャサリン(マーサ・ハイヤー)と滞在していた。ある日、隣人の科学者カボール(ライオネル・ジェフリーズ)が重力を遮断する物質”カボライト”を発明し、それを使って月へ行くための宇宙船も作っていることを知ったアーノルド。彼は大金を手に入れるチャンスと目論んでカボールに投資。出来上がった宇宙船にカボール、アーノルド、キャサリンが乗り込み、3人で月へと向かう。

本作品が製作されたころは、CGなどない時代でしたので、現在のCGを駆使した特撮作品と比較すると、その特撮技術はまだ未熟と感じるのですが、しかし、CGによらないアナログ的な特撮は、今見るとかえって新鮮に感じます。特に、物語後半の月面に着陸してからのシーンでは、昆虫のような姿をした月人やイモムシのような怪獣が登場したりして、ハリーハウゼンのモデル・アニメーションによる特撮の技が冴えます。感心するのは、月面に着陸してから着用する宇宙服のデザインがよく考えられていて、現在宇宙飛行士が着用しているものに非常に良く似ています。まだアメリカが実際に月へ人を送った以前に作られた作品であるということを考えると、その考証はかなり的を得ていたということでしょう。本作品は、舞台が19世紀に設定されている珍しい宇宙SF映画で、全編を通してのんびりとした、ロマン溢れる作品に仕上がった宇宙冒険SFものの秀作だと言えるでしょう。