DISCASレビュー

山崎豊子原作、山本薩夫監督、仲代達矢主演による『華麗なる一族』は、1970年代の金融再編を背景に、財閥一家の野望と崩壊を描いた重厚な人間ドラマである。
大蔵省が地方銀行の吸収合併を進める中、阪神銀行頭取を代々務める万俵家の当主は、自らの権力を拡大すべく、より大きな銀行を飲み込もうと暗躍する。その過程で、家族をも巻き込みながら、親子三代にわたる葛藤が浮き彫りになっていく。
日本の家庭でありながら、万俵家の食事風景はまるでイギリスの貴族のように豪奢で、格式と緊張感に満ちている。そこには、表面的な華やかさの裏に潜む冷酷さや孤独が滲み出ており、家族という枠組みの中で繰り広げられる権力闘争の象徴のようにも感じられた。
山崎豊子の原作らしく、社会の構造と人間の欲望が巧みに絡み合い、観る者を引き込む力を持った作品だった。