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●概要

ニューヨークタイムズに掲載された麻薬の運び屋が90歳の老人であったという驚くべき記事を映画化した作品。2008年公開の映画『グラン・トリノ』以来10年ぶりに製作・監督・主演を務め、2012年公開の映画『人生の特等席』以来6年ぶりに主演を務めたクリント・イーストウッドが90歳間近の孤独な老人で麻薬の運び屋を演じている。

他に映画『アメリカン・スナイパー』のブラッドリー・クーパー、『ミスティック・リバー』のローレンス・フィッシュバーン、『モンタナの風に抱かれて』のダイアン・ウィーストが出演している。

また、クリント・イーストウッドの実の娘アリソン・イーストウッドも出演し、クリント・イーストウッドと親子役で共演している。

●About the Movie

アール・ストーンはデイリリーという花の栽培に力を注ぎ、品評会でも表彰されるほど有名な園芸家として知られていた。しかし、事業にのめり込むあまり娘アイリスの結婚式に欠席するなど家族を顧みなかったことで見放された孤独な男だ。やがて通信販売の波が押し寄せてきたことでストーンの事業は瞬く間に傾いていく。

今は花畑も自宅も差し押さえ寸前という状況に困り果てた90歳の孤独なストーンはある男から「車を運転するだけで金が稼げる仕事がある」と話を持ち掛けられる。

言われた通りに車を運転したストーンはすぐさま高額の報酬を手に入れるのだが、彼はメキシコの麻薬密売組織の運び屋となっていたのだった。

●映画評

87歳の老人が麻薬の運び屋であったというニューヨークタイムズに掲載された新聞記事を基にした驚くべき実話映画。

映画『ダーティハリー』では44マグナムをぶっ放す型破りな刑事、『マディソン郡の橋』では農家の平凡な主婦と4日間の恋に身を焦がす写真家、『許されざる者』ではかつて殺し屋として名を馳せながらも今は苦しい生活を強いられる男を演じてきたクリント・イーストウッド。実話を基にした映画『運び屋』でクリント・イーストウッドは麻薬の運び屋となった90歳の孤独な男を演じている。園芸家として知られ、品評会でも表彰されてきたものの、仕事を優先して娘の結婚式に欠席するなど家族を顧みなかったことで今は孤独な男となってしまっている。

そんなストーンが麻薬の運び屋を務め、不器用ながらにも懸命に生きる姿が映画で描かれていく。男は総じて不器用なものなのだろう。思っていながらも気持ちを言葉にできず、懸命に生きようとするもうまくいかない。それでも自分を見放した家族との絆を取り戻したいと願う気持ちから危険な仕事に従事する姿は見ていて切ない。

映画は麻薬の運び屋として生きるクリント・イーストウッド演じる孤独な男アール・ストーンの姿が描かれると同時にストーンを追跡する麻薬捜査官の姿も描かれていき、緊張感ある映画としても観ることができる。麻薬捜査官を演じているのは映画『アメリカン・スナイパー』で実在のスナイパーを演じたブラッドリー・クーパーだ。イーストウッドとは監督と俳優という立場であったが、本作では俳優同士としての顔合わせが実現している。人生の酸いも甘いも経験してきたアール・ストーンと麻薬捜査官コリン・ベイツがダイナーのカウンター席でのやり取りもまた胸に迫ってくる。

●豆知識

映画『運び屋』でクリント・イーストウッドが演じた演芸家であり麻薬の運び屋アール・ストーンのモデルはレオ・シャープという名の実在の人物である。シャープはアメリカ陸軍に入隊して第二次世界大戦の際にイタリア戦線で戦い、勲章を授与された経歴を持っている。

2009年にメキシコの犯罪組織で麻薬密売を行う「シナロア・カルテル」の運び屋となり、2011年まで務めた。シャープの愛称はスペイン語で「おじいさん」を意味する「エル・タタ」であった。

2016年12月12日にレオ・シャープは92歳で亡くなった。

クリント・イーストウッド演じるアール・ストーンの妻メアリーを演じたダイアン・ウィーストは映画『ハンナとその姉妹』と『ブロードウェイと銃弾』でアカデミー助演女優賞を受賞した。

アリソン・イーストウッドはクリント・イーストウッドの実の娘である。実の兄はベーシストで作曲家カイル・イーストウッドであり、母違いの弟は俳優スコット・イーストウッドである。

●映画『運び屋』特報