DISCASレビュー

カッツ
2025/12/25 08:22

ゾディアック

2007年/監督:デヴィッド・フィンチャー

2007年公開のアメリカ映画『ゾディアック』は、1969年からアメリカで実際に起きた連続殺人事件“ゾディアック事件”を題材に、犯人を追い続けた男たちの執念と葛藤を描いたスリラーである。デヴィッド・フィンチャー監督らしい緻密な演出と、ジェイク・ジレンホールをはじめとする俳優陣の静かな熱演が光る。

実話に基づいていることもあり、単純なサスペンスというより、人間ドラマとしての重みが強い。犯人から送りつけられる暗号文を解読しようと奔走する刑事、新聞記者、漫画家――それぞれが事件にのめり込み、人生を狂わせていく姿が生々しく描かれる。

当時は指紋や筆跡鑑定といった限られた捜査手法しかなく、状況証拠ばかりで決定的な証拠が掴めない。怪しい人物は何人も浮かび上がるが、どれも決め手に欠ける。「こいつが犯人か」「いや、あいつか」と観ている側も振り回され、緊張感が途切れない。だが結局、犯人は特定されないまま物語は終わる。

この“未解決のまま終わる感覚”は、韓国映画『殺人の追憶』を思い起こさせる。犯人を追う過程で生じる人間関係の変化や、捜査に人生を捧げてしまう男たちの姿が興味深く、事件そのものよりも“追い続けることの代償”が胸に残る作品である。

コメントする