特別な夏を胸の痛みと共に瑞々しく描く...映画『HOW TO HAVE SEX』
みなさんこんにちは。takaeです🍿
今回は熱い夏にぴったりの作品、映画『HOW TO HAVE SEX』をご紹介します。
本作は、第76回カンヌ国際映画祭『ある視点』部門グランプリを受賞。監督は、今作で長編デビューを飾るやいなや世界中の映画祭で〈19 受賞 30 ノミネート〉の快挙を果たしたモリー・マニング・ウォーカー。
今回は、7月19日(金)に公開される本作の見どころを、オンライン試写にてひと足早く鑑賞した筆者がネタバレなしでお届けします。
映画『HOW TO HAVE SEX』あらすじ
タラ、スカイ、エムの親友3人組は、卒業旅行の締めくくりとしてパーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラは、この地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くがー。
・この作品で描かれていること
酒やタバコ、際どい服装にド派手なヘアメイク。クラブで踊りまくり、バーで浴びるほど酒を飲み、意気投合した男の子たちと夜通し騒ぎまくる。そして、酔ってヘトヘトになりベッドに倒れ込んで死んだように眠る。卒業旅行でギリシャのクレタ島にやってきた彼女たちは、とにかくハイテンションで見るもの全てに大はしゃぎ。そして、彼女たちの一番の関心事といえば異性とセックス。
主人公のタラは3人の中で自分だけがバージンであることに負い目や恥ずかしさを感じ、何とかこの旅で初体験という“ミッション”を果たそうと固く決意します。
こんな風に書くと、ティーンエイジャーのひと夏の体験、恋とセックス、友情が絡み合う思い出の夏を描いた物語...のようにも思えますが、この作品が描いているのは単にそれだけではありません。この作品には、恐らく多くの女性が体験したことがあるであろうセックスにまつわる戸惑いや傷つき、葛藤などがリアルに繊細に描かれています。
・子どもと大人のちょうど『真ん中』
彼女たちを見て、自分の学生時代とはあまりにかけ離れていることにびっくりしましたが、それでもどこか懐かしく感じる部分もあったり。
それは、まだ大人としての責任を持たず、社会という砂漠に出ていく前のオアシスにいる“子どもと大人のちょうど真ん中”という立ち位置。オアシスにいられる時間は今しかない。ここを過ぎたら厳しい現実が待っているとどこかで感じながらも、今に身を浸す刹那的な時間。
エネルギーを使い切らないのは罪だとさえ思えるように一日一日を過ごす彼女たちが時折見せる素顔や将来への不安は、大人びた彼女たちもまだ10代なんだと実感できる瞬間でもありました。
・セックスはステイタス?
今回特に強く感じたのは、彼らにとってセックスはステイタスだということ。セックスしたことがあるのは当たり前、夏の間に何人と体験できるかという経験人数で優劣が決まるほど。そういう意味で、バージンのタラはヒエラルキーの一番下。それは焦って当然ですよね。
だけど、初体験って果たして“ミッション”と言えるものなんだろうか?セックスとは、この人とならとか、この人としたいとお互いに思えた時にするものなのでは?
セックスがステイタスであるという状況においては、この一番大切なことが見過ごされてしまっているような気がします。それによって、望まない相手との望まないセックスを“しなければならないもの”として受け入れざるを得ないというリスクを背負うことになる。この作品は、そのことに警鐘を鳴らすような役割も担っていると筆者は感じました。
・セックスや初体験に対する男女の捉え方の違い
もうひとつすごく考えさせられたのは、セックスや初体験に対する男女の捉え方の違いについてです。
例えば男性の場合は“童貞を卒業する”という表現のように、初体験で一人前の男になるというポジティブなイメージがあるような気が。一方で女性の場合は、“バージンを失う”というように、初体験が喪失感を伴うものであるように表現されます。この違いはすごく大きいような気が。
つまり、女性にとって初体験は”受け身“であり“奪われるもの”。その分、望まないセックスはその後も残る心の傷になりうる。
私は女性なのでどうしても女性の視点でしか考えられませんが、これは凄く大切なことのような気がします。この作品が、初体験やセックスに対する男女の認識の違いを話し合えるきっかけになると良いなと、改めて思いました。
夏の暑い日差しやプール、夜の砂浜。鳴り響くクラブミュージックに焼けた素肌。お酒とタバコ、そしてセックス。
そんな喧騒の中で感じる孤独や不安、胸の痛み。それらを瑞々しくリアルに描いた本作は、年齢、性別問わず共感でき、思わず自分の若かりし頃と重ね合わせてしまうような物語。
そして、観終わった後に残るのは、夏が終わる寂しさと胸が締め付けられるような微かな痛み。タイトルだけで苦手なジャンルだと判断せず、是非たくさんの人に観て欲しい。そして、この作品を観ることが性にまつわるステレオタイプや間違った認識をアップデートするきっかけになるといいなと思います。
映画『HOW TO HAVE SEX』
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7 月 19 日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋、
シネマート新宿、アップリンク吉祥寺ほか全国公開
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©BALLOONHEAVEN, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION,
THE BRITISH FILM INSTITUTE 2023
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
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最後までお読みいただきありがとうございました。これからも様々な新作映画やオススメ映画の見どころをお届けしていきたいと思います。どうぞお楽しみに!
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投稿を表示若い頃の性の赤裸々な気持ちがリアルに感じられそうね✨あの頃は早く卒業したいって気持ちはほとんどの方がもってたはずだからね😅こうして大人の階段を登っていく...みたいな☝️。
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