DISCASレビュー

カッツ
2025/10/12 07:45

八甲田山

新田次郎の原作「八甲田山 死の彷徨」を映画化した作品。高倉健、北大路欣也の主演による重厚なドラマであり、「天は我々を見放した」という台詞は、当時大きな話題となった。
物語は、日露戦争を見据えた冬山訓練として、八甲田山を南北から二つの部隊が踏破しようとする実話をもとにしている。しかし、装備も計画も不十分で、指揮系統も混乱したまま、過酷な自然の中へと進軍していく。やがて大寒波が襲い、多くの兵士が凍死するという悲劇が描かれる。
雪深い山中を行軍する場面は圧巻で、自然の厳しさと人間の無力さがひしひしと伝わってくる。映像の迫力とともに、映画音楽も作品の緊張感と哀しみを見事に支えていた。
人間の尊厳、組織の脆さ、そして自然の圧倒的な力を描いたこの作品は、戦争映画でありながら、静かな問いを観る者に投げかけてくる。

 

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