DISCASレビュー

かずぽん
2025/07/27 23:38

悪魔のような女

【妻と夫と愛人】

 

(1955年・仏・114分・モノクロ)
監督:アンリ・ジョルジュ・クルーゾー
原題:Les Diaboliques
原作:ポワロー=ナルスジャック『悪魔のような女』

久しぶりに面白いと思える作品だった。ジャンルとしては「サイコスリラー」で、心理的・感情的にザワザワと不安が掻き立てられる。

舞台となるのは、パリ郊外にある寄宿制の小学校。校長のミシェル(ポール・ムーリス)は粗暴でケチな男だった。妻のクリスティーナ(ヴェラ・クルーゾー)は英語教師をしている。クリスティーナは病弱で心臓が悪かった。
冒頭、左目に青あざを作ったニコール(シモーヌ・シニョレ)にクリスティーナが「ミシェルがやったの?」と聞くと「アイツ以外に誰がいるの」とニコールが答える。如何にも気の強そうなニコールは、校長ミシェルの愛人だった。
そんな勝気なニコールもミシェルに嫌気がさしたらしく、クリスティーナにミシェルの殺害を持ちかける。

気の弱いクリスティーナは、ニコールに押し切られる感じで渋々同意する。ニコールが立てた計画に従って二人は田舎にあるニコールの実家に行き、そこからミシェルに別れ(離婚)を告げる電話をかける。夫のミシェルは怒って「これからそっちに汽車で行く」と言う。
夫が到着するとニコールは隠れ、クリスティーナは睡眠薬入りのウィスキーを飲ませる。夫が眠ってしまうと、ニコールと共にバスタブで溺死させる。その溺死体は学校に戻ってからプールに沈めて、何食わぬ顔で発見されるのを待つ。

しかし、遺体は浮いて来ないどころか消えて無くなってしまったのだ。それどころか、死んだ時にミシェルが着ていたスーツがクリーニング店から届いたり、生徒が校長から罰を与えられたと言い出したり、学校で撮った記念写真に校舎の中にいるミシェルが写っていたり、不可解なことが続いた。
数日後、溺死体があがったという新聞記事を見て、クリスティーナは身元確認のために警察を訪れる。しかし、それは他人のものだった。
そこに警察を退職した元警視のフィシェがいて、ミシェルの失踪事件を調べようと言い出す。
消えた死体の謎に加えて、フィシェの執拗な追求がサスペンスフルな展開を加速していく。

クリスティーナの夫であり校長でもあるミシェルの横暴さを見ていると、まったく同情心が湧いてこない。しかも、この学校はクリスティーナが親から相続したものだったし、彼自身が「俺の才覚と君の資産のお陰だ」と言っていた。彼が言う才覚とは「ケチ」のことで、生徒の食事の内容を見るとゾッとする。臭いのする魚を酢でしめて出し、それを教師たちも食べるのであるが、クリスティーナはどうしても喉を通らない。それでも彼は「飲み込め」と怒鳴りつける。(あー、見ているだけでも無理だ。)
ストーリーを追いながら、ミシェルの遺体はどこに消えたのか?それとも彼は生き返ったというのか?誰もが推理せずにはいられないと思う。
そして、自分の推理を二転三転させることになるだろう。果たして真相は如何に・・・(多分、最初の印象・心象が正しいと思う。)
久々に面白いと保証付きでおすすめ。
 

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