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2025/09/18 09:47

人情シネマ館れいんぼう “映画はエンターテイメントの塊” | すたみなに聞く

映画と出会い、ラジオへと続く道

「映画はエンターテイメントの塊だと思っています」
 

子どもの頃から映画館は特別な場所だった。館内の暗闇に包まれ、大きなスクリーンに光が灯る瞬間のわくわく感。日常の延長にある世界から、一気に異世界へと飛び込むような高揚感。それは彼にとって、人生の早い段階から「現実を超えた体験」を与えてくれる場所だった。

レンタルショップが全盛だった学生時代は、棚に並ぶ無数のジャケットを眺めること自体が冒険だったという。気になるタイトルを手に取り、解説文を読みながら選ぶ。そのワクワク感はまるで「次に出会う物語を探す宝探し」のようだった。時には外れもあったが、それすらも自分の映画体験を広げる糧になった。

やがて社会人になり、知人を通じて出演することになったのがラジオ番組「ヒーローズリーグ」だった。当初は高齢者支援の話題で呼ばれたものの、雑談の中で自然と「実は映画が好きなんです」と打ち明けたことから番組の流れが変わる。そこから映画トークのコーナーが生まれ、聴取者の反響も大きく、やがて映画紹介が活動の中心へと発展していった。

現在では月に2回のペースで収録を行い、1回の放送で最大4本の映画を取り上げる。日本国内で公開される新作は月70〜80本。膨大なラインナップの中から作品を選び出す作業は想像以上に難しい。しかし「だからこそ、リスナーに届ける作品は妥協なく選び抜く」とすたみなは語る。彼にとって紹介する映画は単なるコンテンツではなく、リスナーの人生を豊かにする「贈り物」でもあるのだ。


ラジオだからこそ伝えられる映画の魅力

「記事ではなく“声”で伝えられることに意味があるんです」

文字情報では温度感や情熱が伝わりにくい。だが声であれば、感動した瞬間の息づかいやトーン、時に震えるような声色までがそのまま届く。映画館で体験した高揚や涙を、疑似的にリスナーと共有できるのだ。

実際、すたみなは作品ごとに声のリズムを変えている。アクション映画を紹介するときにはテンポを速め、熱気を帯びた語り口でシーンの迫力を再現する。一方で静かな人間ドラマでは語りを抑え、間を活かすことで余韻を残す。こうして耳だけで映画の「雰囲気」を立ち上げることこそ、ラジオ映画紹介の醍醐味だ。

さらに彼は、配信サービスでは観られない旧作や、上映館の限られた作品を積極的に取り上げている。「どうしても話題作ばかりが世の中を席巻してしまう。でも、観られないからこそ価値がある映画もあるんです」。SNS(X)でリスナーから推薦を募り、双方向的に作品を選ぶこともある。そうしたやり取りの中で「自分も番組作りに関わっている」という参加感をリスナーに感じてもらうのも狙いだ。


「映画は他人の人生を体感できるもの」

すたみなが語る映画観は、非常に人間味にあふれている。
 

「映画は単なる物語ではなく、他人の人生を追体験できるもの。監督の頭の中を覗き、役者の表現を通して別世界を味わうことができる。それが映画の本質だと思うんです。」 

配信サービスで減少している「メイキング」や「裏話」を取り上げることに積極的だ。スター作品の裏側に隠されたエピソードを語ることで、映画をより深く楽しむきっかけをリスナーに提供する。

たとえば『ダイ・ハード』の撮影エピソード。犯人役の俳優がリハーサルで「3つ数えて落とす」と聞かされていたのに、本番ではいきなり落とされ、その驚愕の表情がスクリーンに残ったという話だ。「あの表情は作りものではなく、本物の恐怖だったんです」。リスナーはこうした裏話を知ることで、映画を二度三度と観直したくなるのだという 。


人生を変えた映画たち

すたみなの映画人生を語る上で、いくつかの作品は特別な位置を占めている。

まずは北野武監督の『キッズ・リターン』。若者が夢を追い、挫折し、それでも再起を誓う物語に、強く心を揺さぶられたという。特に「まだ始まってすらいないんだ」という台詞は、困難に直面したときに何度も背中を押してくれた。

 

次に挙げるのは世界的に有名な『ロッキー』シリーズ。すたみなは「少年時代、誰もが“自分はロッキーだ”と重ね合わせたのでは」と語る。努力と希望を信じる物語は、自分自身を奮い立たせる教科書のような存在だった。リングに立つロッキーの姿は、挑戦し続ける自分の人生そのものと重なる。

 

そして忘れられないのが『ゴールデンスランバー』だ。逃亡中の息子を守ろうとする父親(伊東四朗)の姿に胸を打たれた。「父が息子を守る姿を、実の息子ではなく彼を追っていた警察官が泣きながら見守る」シーンは、今も心に深く刻まれている。映画はスクリーンの外にまで感情を広げ、観る人の人生観にまで影響を及ぼす。その実感を強烈に与えてくれた一作だった。


映画を声で届けるということ

映画はスクリーンの中で完結するものではなく、観る人の人生と結びつくことで初めて本当の意味を持つ。すたみなにとってラジオで映画を語ることは、自分の体験を共有し、リスナーに新しい出会いを手渡す営みだ。

「声で届けることで、感情の波や熱意をそのまま感じてもらえる。あなたの人生と響き合う一本に出会ってほしい」

すたみなの語りは、映画と人、そして人と人をつなぐ架け橋になっている。

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1 件の返信 (新着順)
U子
2025/10/07 19:12

お二人とも、ステキです😀