DISCASレビュー

かずぽん
2025/07/01 12:47

レ・ミゼラブル 25周年記念コンサート

【聞きしに勝る名演】

 

(2011年・英・170分)
製作:キャメロン・マッキントッシュ
原題:Les Miserables 25th Anniversary Concert
原作:ヴィクトル・ユゴー『レ・ミゼラブル』

評判の高い本作を観たい観たいと思いつつも、2012年の映画(ミュージカル版/ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイ)が自分には合わなかったので(しかも、本作は170分という長尺)多少の不安がありました。
しかし、それは全くの杞憂でした。

2010年、初演から25周年を迎えたミュージカル『レ・ミゼラブル』
それを記念して、ロンドンで記念コンサートが開催されました。500人以上のキャストと生のオーケストラは圧巻です。
観客が物語に入り込んで息を止めるのも感じられますし、拍手や笑い声も聞こえて、自身も劇場にいるような気持になれる濃厚な170分でした。

ロンドンの“O2アリーナ”が会場で、舞台の奥には生のオーケストラ、その後ろにはコーラスやアンサンブルの人々、更に舞台上部には大きなスクリーンが設置されていて、舞台上の演者の顔が大写しになったり、あるいは背景(ジャン・バルジャンが逃げる下水道やジャベールが身を投げる河など)が適宜映し出されていました。

すべて演者の方々の歌唱によって語られるので、あらすじを知らないままご覧になっても大丈夫だと思います。
シーンごとにキャストが登場して情感たっぷりに歌いあげます。舞台上にはいくつものスタンドマイクが立っているだけで、普通の演劇のように家屋や町並みの大道具はありませんし、小道具を手にすることもありません。不思議なことにそれがまったく気にならないのです。
ジャン・バルジャンが囚人となったきっかけも、銀の食器を盗んだけれど司教の言葉で心を入れ替えることになった件も、ジャン・バルジャンがコゼットを迎えに行くシーンも、彼らがすべて歌で伝えてくれます。
この舞台においてもテナルディエ夫妻の悪党ぶりは見事に伝わってくる名演技でした。ジャベール警部が「法か慈悲か」で苦悩するシーンは、俳優の方の生真面目な風貌と相俟って潔く感じました。
エポニーヌのマリウスに対する思いですが、ミュージカルでは彼女の切ない思いが歌で語られるので映画よりも深く心に響きます。
大盛況に終わった舞台でしたが、サプライスで登場したのは初代キャストの面々でした。観客の感動と熱気が伝わって来るスタンディング・オベーションでした。
初代キャストと現キャストが一緒に歌う場面もあり、観客の歓喜は更に熱を帯びていました。
このミュージカルの作詞者、作曲家も登場して製作のマッキントッシュ氏と感謝を伝え合います。
脚本に携わったクロード=ミシェル・シェーンベルク氏の言葉に笑いと拍手が起きました。「こうした公演の多くでは亡き作者を偲ぶのですが、我々はまだ健在です。」

※ 本作のジャケットにも映っている女の子ですが、(よく見かけるので)本作を象徴するものなのだろうかと思っていたら、あれは原作本のコゼットのイラストだそうですね。

 

楽曲の紹介】

(第一幕)
・プロローグ(囚人たちの力強い歌。ジャン・バルジャンが囚人となったきっかけが歌われる。)
・独白
・夢やぶれて
・波止場(ラブリィ・レイディ)

(第二幕)
・オン・マイ・オウン
・恵みの雨
・その夜(共に飲もう)
・彼を帰して
・下水道(オーケストラの演奏風景も見られる。背景の下水道が映し出されると、テナルディエが登場して歌い出す。)

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