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私の好きな映画

Hiroki Yamaguchi
2023/11/13 13:54

「正しく生きる」とは

▼タイトルの意味

映画のタイトル「正欲」
聞いたことない言葉ですよね?

「正欲」とは、「地球上で生きていくための証を持つべき欲」。
僕はこの映画を見てそう捉えました。

生きていくための証を欲するのは、正しい欲ですよね。この欲がなければ、皆生きて行けない、生きる理由を失ってしまうのではないでしょうか。
しかし、この映画で伝えたかったのはそれだけではありません。

 
▼登場人物

この映画は、検事の寺井と不登校の息子、そしてあるものに対して性欲を感じてしまう男女3名の心の葛藤や生き様を中心に、多様性とは何かを問いかけてきた映画でした。

 

稲垣吾郎演じる検事の寺井は、小学生の息子の不登校に悩む親。引きこもりの息子が欲したYouTubeへの投稿を否定し、「普通」の小学生であることを強要し、そのために夫婦仲も悪くなっていく。
 

新垣結衣演じる桐生夏月は、あるものに性的欲求を感じるアラサー独身女性である。中学の同級生である磯村優斗演じる佐々木佳道との鮮烈な過去の出来事を忘れられず、同窓会で再会し、お互い同じ性的嗜好であるという秘密を共有するかけがえのない仲に発展していく。

上の2人と同じものに欲情してしまう男子大学生。彼を好いてしまう、性的トラウマを抱えた女子大学生。彼らもまた、自分の癖やトラウマに苦しんでいた。

 

▼印象的な言葉たち

・寺井の
「社会のバグ(規格外な悪魔みたいな人間)がいるんだよ」


YouTubeの危険性を訴えていた言葉だが、子供が安全に社会とつながれる手段なんてあるのだろうか。子供にとっての「普通」の生活とは何なのだろうかと考えさせられました。

子供は小学校に登校しなければならない。
子供は友達と遊ぶべきだ。
Youtubeは危険なものだ。

これは全部主人公の主観なのではないでしょうか。かくいう僕も、この考えに囚われている人間の1人で、自分の子供はできる限りインターネットやそう言ったものとの関わりを避けさせたいと考えてしまいます。
この考えは間違っているのでしょうか?いけないことなのでしょうか?自分が『バグ』である可能性は?


・桐生と佐々木の
「自分がどの様な人間かを、人に説明できなくて息ができなくなったってことありますか?」
「誰にもバレない様に、無事に死ぬために生きるって感じ。」

2人の会話の中で、個性では片づけられない秘密(癖)を持つ人間であるが故の苦しみを感じさせられました。普通に生きていて、自分は周りと変わっている、それを隠していかなければ「普通」ではなくなってしまう。そういうことに怯えている毎日。衝撃的でした。

 

 ▼映画を観た感想

今の時代、子供に至っても、不登校児も増加する中、往来の通学するだけの学校から通信性学校や家庭学習など多種多様な学び方が選択できるようになりました。
また、LGBTQ +の様な性的マイノリティの人への偏見や差別をなくそうとう言う考えが主流になり、様々な性的指向を個性と認め合う多様性の時代になっています。

今回は、「水に対する性欲」という、周りに迷惑をかけない「癖」と言ったら語弊になるかもしれませんが、そういった内容でした。その中でも主人公たちは、それが周りにバレまいと考え、行動し必死に生きています。

では、これが「小さい子供に対する愛欲」や「人を殺すことに対する欲」だとしたらどうでしょうか?
僕が最初に思いつくのは、『神戸連続児童殺傷事件』です。犯人は、「子供を殺すときに快感を得られる」と聴取の際に述べましたが、それを1人の人間の「癖」として認められますか?人を殺すことは悪いことだという共通認識がある世界で、この「癖」を持っている人間は迫害されなければなりません。ではこの「癖」を持った人間はどう生きて行けばいいのでしょうか。

さまざまな価値観が多様化し、それを受け入れるか、拒まなければならないかという線引きはどこにあるのでしょう。男性が女性風呂、女性用トイレ、女子大に入るのは、正しいのか悪いことなのか。世界では、「拒んではいけない」という決定が多い中、その決定に反対する意見も多いです。

個人の思考の自由、それに苦しむ人々、それを解放する人々、受け入れる人々、反対する人々。誰しもがなりうる存在として、それらとどう向き合っていくのか。
誰しもにある「癖」、それが社会に受け入れられないものだった場合自分はどう生きていかなければならないのか。何が正しくて、何が悪なのか。
自分の価値基準がいつでも正しいなんて、そんなことはないのに、どうして自分は間違っていないと思えるのか。
自分がマイノリティーだった場合、この世界に何を思うのか。
「癖」や「個性」に対する社会としての向き合い方、今の時代だからこそ、より考えさせられる映画だと感じました。

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