『きさらぎ駅 Re:』― 怖いのに、なぜか安心する。王道Jホラーの”お約束”が心地いい不思議な一作
「都市伝説」と聞くと、胸がざわつくような、それでいて少しワクワクするような、不思議な気持ちになりませんか?
今回ご紹介する映画**『きさらぎ駅 Re:』**は、そんな都市伝説好きの心をくすぐるサスペンス・ホラーです。
一度観たことがあるような展開、少し懐かしい雰囲気。しかし本作には、ただ怖いだけではない、奇妙な「心地よさ」と「中毒性」がありました。新しい刺激ではなく、「知っている恐怖」に安心して浸りたい。そんな少し変わった願いを叶えてくれる、不思議な魅力にあふれた作品です。
(あらすじ)本作の主人公は、かつて異世界「きさらぎ駅」に迷い込み、奇跡的に生還した女性。しかし、現実世界に戻った彼女を待っていたのは、過酷な運命だった。世間からの好奇の目に晒され、母親の面倒を見ながら暮らす彼女の人生は、決して幸せなものではなかった。 そんな中、彼女は自らの新たな思いを達成するため、再びあの「きさらぎ駅」に挑むことを決意する。前半はドキュメンタリータッチで彼女の過去と苦悩を振り返り、なぜ彼女が再びあの場所へ向かうのか、その切ない思いが描かれていく。
繰り返す恐怖がクセになる!懐かしのJホラーという「安心感」
本作の魅力は、何と言ってもこの**「お約束感」**です。
迫り来る恐怖のパターンは、ある意味で決まりきっています。日本のホラー映画でよく見る、少し時代を感じさせるメイクやCG。しかし、それが決してチープに感じないのです。むしろ、2000年代のJホラーブームを体験した世代にとっては、どこか懐かしく、ノスタルジックな気持ちにさせてくれます。
「ああ、次こうなるんだろうな」という予感が、不思議と画面から目を離せなくさせる。この「決まりきったパターンでドキドキさせられる」感覚が、一周回ってクセになるのです。最新技術で度肝を抜かれるのではなく、慣れ親しんだ味付けで楽しませてくれる。そんな”老舗の味”のような安心感が、この映画の最大の魅力かもしれません。
異世界なのに、どこかリアル。「助け合い」が描く人間味
物語の前半で語られる、主人公の不遇な人生。その苦悩や切なさには、思わず同情してしまいます。
そして、彼女が再び「きさらぎ駅」で出会う人々。この映画の凄いところは、極限状態にありがちな「人間の醜い争い」を声高に描くわけではない点です。
登場人物たちは、お互いが妥協し、助け合う。そんな人間味あふれる姿が、このありえない物語に妙なリアリティを与えています。「もし自分がこの状況に陥ったら…」と、どこか身近に感じてしまう不思議な感覚。このリアルさが、物語に深みを与えています。
少し残念?
でも、それも味かもしれないポイント
正直に言うと、一度生還した場所へあえて戻ろうとする主人公の行動や想いには、すぐには理解しがたい部分も多くありました。「なぜ、そこまでして?」と、観ている側を戸惑わせます。
しかし、鑑賞後に色々と考えを巡らせてみると、「あの不可解さこそが、この映画の”色”なのかもしれない」と思えてくるのです。全ての答えを提示しないからこそ、観る側に解釈の余地が生まれ、より印象的な作品になっているのかもしれません。
こんな人におすすめ!
懐かしいJホラーの雰囲気を楽しみたい人
「きさらぎ駅」などの都市伝説が好きな人
怖すぎるホラーは苦手だけど、少しドキドキしたい人
決まりきったパターンで安心して楽しめる、”お約束”の快感がわかる人
新しい恐怖や衝撃を求めるのではなく、「ああ、これこれ!」と言いながら安心して楽しめるホラーを試したい。そんな気分の時に、ぜひ手に取ってみてほしい一作です。