昭和の銀行マンのダーティーな社内闘争『黒い画集 第二話 寒流』
■黒い画集 第二話 寒流
〈作品データ〉
松本清張原作の「黒い画集」第6話「寒流」を池部良主演、鈴木英夫監督で映画化した銀行マンたちの社内の争いを描いた熱いドラマ映画。安井銀行に勤める主人公・沖野は桑山常務の推薦で池袋支店の支店長に抜擢される。沖野はより成績を上げようと割烹料理屋「みなみ」の女将・前川からの1千万円の融資を引き受けたことをきっかけに、前川と親密になるが、そこに桑山も知り合うことになり、三人で湯河原へ遊びに行くことに。主人公・沖野役を池部良が、前川役を新珠三千代が演じ、他平田昭彦、荒木道子、吉岡恵子、多田道男、小川虎之助、中村伸郎、小栗一也、松本染升、宮口精二、志村喬、北川町子、丹波哲郎、田島義文、中山豊、広瀬正一、梅野公子、池田正二、宇野晃司、西条康彦、堤康久、加代キミ子、飛鳥みさ子、上村幸之、浜村純、西條竜介、坂本晴哉、岡部正、草川直也、大前亘、由起卓也、山田圭介、吉頂寺晃、伊藤実、勝本圭一郎、松本光男、加藤茂雄、細川隆一、大川秀子、山本青位が出演。
公開日:1961年11月12日
時間:96分
配給:東宝
【スタッフ】
監督:鈴木英夫/脚本:若尾徳平
【キャスト】
池部良、新珠三千代、平田昭彦、荒木道子、吉岡恵子、多田道男、小川虎之助、中村伸郎、小栗一也、松本染升、宮口精二、志村喬、北川町子、丹波哲郎、田島義文、中山豊、広瀬正一、梅野公子、池田正二、宇野晃司、西条康彦、堤康久、加代キミ子、飛鳥みさ子、上村幸之、浜村純、西條竜介、坂本晴哉、岡部正、草川直也、大前亘、由起卓也、山田圭介、吉頂寺晃、伊藤実、勝本圭一郎、松本光男、加藤茂雄、細川隆一、大川秀子、山本青位
〈『黒い画集 第二話 寒流』考察〉
昭和30年代半ばに公開された松本清張原作の『黒い画集』シリーズ全3作をTSUTAYAで借り、『黒い画集 ある遭難』と同じく前に見たことがある『黒い画集 第二話 寒流』も改めて見ることにした。久しぶりに今改めて見ると、テレビドラマ「半沢直樹」や映画化された『アキラとあきら』のような池井戸潤原作の銀行員たちの熾烈な社内の争いを描いたドラマで、
不倫恋愛や銀行上層部のダーティーな手段を垣間見る重厚なドラマになっている。
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前半は池袋支店長の沖野と料亭の女将のやり取りに桑山常務も加わるが、男女間の問題については沖野、前川と沖野の病弱な妻&子供二人との不倫、三角関係の方がクローズアップされている。中盤からその仲に割って入ってきた桑山常務対沖野の社内闘争になるが、一流企業の常務ともなるとあの手この手の金とコネがあり、かなり手強く、一支店長ではどう足掻いても分が悪い。
これ、どう見ても後の池井戸潤の原作やテレビドラマ&映画化作品が影響を受けたことはもちろん伺える。そこに探偵や総会屋、アウトローが絡んでくる辺りがいかにも昭和らしいが、池袋の割烹料理屋の女将の取り合いだけでここまでやるのかと妙に感心してしまう。
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この『黒い画集 第二話 寒流』のみ唯一サスペンスではない作品だが、不思議とサスペンス並みの重さを持った作品で、『黒い画集』シリーズに相応しい暗く、重いバッドエンドの作品である。森繁久彌主演のコメディ映画シリーズ『社長シリーズ』でも会社の上層部連中の話はあったが、『寒流』は冒頭の会議のシーンや桑山のあの手この手がダーティーで重くてリアリズム溢れる。
主人公が愛人と家庭を両天秤にかける展開は『あるサラリーマンの証言』と同様。池部良が演じる沖野の収入事情の描写はないが、住んでる家や子供らの様子から中流家庭であることは分かるし、銀行マンとあってかそれほど庶民派アピールや平凡さは感じないが、そこは池井戸潤原作作品でもそうだが気にならない。そこで平凡なおじさんの小林桂樹ではなく、『青い山脈』や『現代人』、『坊ちゃん』といったいわゆる正統派の作品で主演をしていた池部良を主演にしているので、中盤から後半のダーティーな桑山常務との争いもクリーンなベビーフェイスの池部良にぴったり合っている。
対する桑山常務役を『ゴジラ』の芹沢博士役で有名な平田昭彦が演じていて、ダーティーなやり口の桑山常務にぴったりだし、ヒール役にはもってこいである。加えて、割烹料理屋の女将・前川役を『須崎パラダイス』の新珠三千代が演じていて、沖野と桑山との三角関係や沖野の不倫、家庭崩壊の元凶となる危険な関係の女としてやはりうってつけだったりする。さらには志村喬や宮口精二、丹波哲郎の役もあっているが、池部良の役と丹波哲郎の役は逆なんじゃないかという気がしてならない。
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後の作品の影響は上記でも書いた通りだが、一貫してシリアスな作りにした辺りに池井戸潤作品に感じる重さ、生々しさをこの作品から感じられる。それも平成のITバブル期やリーマンショックの時代ではなく、しかもまだ高度成長期にさえ入っていない、いやこれから入りつつある昭和30年代半ばの時代の銀行マンの争いを描いているから貴重である。
しかしながら、『黒い画集 あるサラリーマンの証言』と比べると銀行の社内風景こそはあるが、それ以外の世相や時代の風景の描写は少ないし、中年臭さはないので、『あるサラリーマンの証言』よりも若干見劣りする印象を受ける。
『黒い画集』シリーズ3作の中では主人公がさほど黒くはない、登山が趣味という中年サラリーマンでイノセントな男なので、改めて見ると他の2作とは一線を画しているような気もするが、全体的に暗い雰囲気のバッドエンド作品という点から、