伝説的記録に挑むスラッガーの姿を見事再現
「61*」(2001) 米 129分
MLB開幕!"聖林の描いたベースボール" Vol.2 (Cover photo: via IMDb https://www.imdb.com/title/tt0250934/mediaviewer/rm255739904)
熱きヤンキースファンとして鳴らすビリー・クリスタルが自らメガホンを取った本作で扱うのは、同じチーム内で熾烈なホームラン王争いを演じ、ベーブ・ルース超えの記録更新を懸けた強打者ミッキー・マントルとロジャー・マリスの謂わば舞台裏エピソード(比重はいくらかマリス寄り)である。ケーブルTV向けに製作されたものだが、撮影を名手ハスケル・ウェクスラーが担い、野球技術指導に元メジャーリーガーのレジー・スミスが当たるなど総体的クオリティは高く、劇場用と較べても仕上がりに何ら遜色はない
抜群の身体能力且つ明朗なキャラクターを備えた「天性のスター」マントルと武骨で不愛想な中西部気質のマリス。チーム生え抜きの前者が人々を魅了したのに対し、移籍組の後者は加入一年目から素晴らしい成績を残すもその「男は黙って」風な態度が影響し米国でも取分け辛辣で有名なNYのファン及びメディアに総スカンを食らう。偉大な先輩ベーブ・ルースの持つ年間最多ホームラン記録に迫ったマリスが本拠地で大ブーイングを受ける場面や様々な誹謗中傷によりハートが折れそうになったマリスがマントルを前に「俺はただ好きな野球をしたいだけなんだ」と言葉少なに訴える場面は何ともやりきれない気持ちにさせる。ファンの存在無くしてプロ野球は成り立たぬが観客側も選手への敬意と礼節を忘れてはならないと改めて思う。巷では不仲説も囁かれたマントルとマリスの関係だがここではそれを友好的に描いている点がとても興味深い。かつて東京ジャイアンツの投手陣を牽引した江川卓と西本聖の例にもみられるように兎角メディアはライバル同士を犬猿の仲にしたがる
スポーツ映画においては実技部分の本物らしさに真価が問われると云っても過言ではないが、この作品ではデジタル処理加工を駆使しながら上手くライブ感が表されていた。無回転球を放るナックルボーラーのピッチングシーンなどは「天晴」を上げてもいいのではないか
少年時のクリスタルをヤンキースタジアムへ連れてきた父親に捧ぐ一作は全篇を通して彼のパッションが溢れる。今やマントルとマリスがルースに並ぶ伝説のプレーヤーだけに彼らの実像に触れられたのは有難い。こうなればMM砲に匹敵する日本のON砲(王貞治と長嶋茂雄)を主題にした伝記映画のプロデュースもぜひ望むところだ
〔MLB通算成績〕
Mickey Mantle: G 2401, AB 8102, AVG .298,
HR 536, RBI 1509, H 2415
Roger Maris: G 1463, AB 5101, AVG .260,
HR 275, RBI 850, H 1325
※マントル#7,マリス#9 は共にヤンキースの永久欠番。但しマリスは殿堂入りしておらず
【★★★★★★★☆☆☆】
(2025-18)

- 原題:61*
- 監督:ビリー・クリスタル
- 脚本:ハンク・スタインバーグ
- 撮影:ハスケル・ウェクスラー
- 編集:マイケル・ジャブロウ
- 音楽:マーク・シャイマン
- 出演:バリー・ペッパー、トーマス・ジェーン、ジェニファー・クリスタル・フォーリー
- 配信日:2001.04.28 (米)

ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示この作品はどこで配信されてるのでしょうか?
ミッキーマントルは史上最高のスイッチヒッターで、それに次ぐスイッチヒッター(日本来日時は)として巨人にやって来たレジ―スミスがテクニカルアドバイザーというのは興味深い。
オープン戦ですが、甲子園で彼のホームランを見ました。
私の好きなハスケル・ウェクスラーがカメラ、音楽のマイク・シャイマンはビリー・クリスタルとよく組んでいますね。
日本で野球のベースボールレジェンドを取り上げるなら西本幸雄監督を取り上げてほしい。