DISCASレビュー

カッツ
2025/10/26 08:22

青春の殺人者

1974年に千葉県市原市で実際に起きた親殺し事件をもとに制作された作品である。主演は水谷豊と原田美枝子。市原悦子も印象的な存在感を放っている。
若き日の水谷豊は、当時チンピラ役を多く演じていたが、本作でも家庭内に居場所を見いだせず、やがて親を手にかけてしまう青年を熱演している。彼の内に秘めた怒りや孤独が、抑制された演技の中に滲み出ており、観る者に強い印象を残す。
原田美枝子はおそらく10代での出演だが、惜しげもなく裸身を晒している。
物語の背景には、成田国際空港の建設が進みつつあった当時の社会状況が映し出されており、時代の空気や地方都市の閉塞感がリアルに描かれている。
家庭、社会、若者の孤独と暴力——そのすべてが交錯する本作は、単なる犯罪映画にとどまらず、時代の歪みを映し出す鏡のような作品だった。

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