J.T.Hammer
2025/11/08 14:05
若き天才作家が著した心理小説の傑作
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【2025-No.32】
愛の渇き
三島由紀夫 著
新潮文庫
突然の病で夫を喪い、義父のもとに身を寄せた女を主人公に、人間の感情のなかでも取分け不可解で厄介な「嫉妬」に関して著者ならではの豊かな語彙と絶妙な比喩を用いて克明に綴った心理小説の傑作。驚くべきはそよ風に揺れるカンテラの如く微妙に振れるヒロインのエモーションを三島が弱冠25歳にして記したことだ。仮名と漢字の配分から句読点の打ち方に至るまで綿密に計算されたセンテンスは余りに美しく完璧を極める。個人的に文士において天才の名をひとり挙げるならば三島以外にいない

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