世紀の謎 空飛ぶ円盤地球を襲撃す
世紀の謎 空飛ぶ円盤地球を襲撃す(1956年)
監督 フレッド・F・シアーズ
主演 ヒュー・マーロウ(アメリカ)
空飛ぶ円盤が地球を大挙襲撃、迫りくる危機に敢然と立ち向かう科学者の姿を描いたSF映画。


映画は世界中で円盤の目撃情報が寄せられ、米銀が迎撃命令を出すところから始まる。相手の実力も分からないのに、武力行使を決定するあたり、さすがこの頃の米軍のやる気は違う。幕末に攘夷を実行して、欧米列強艦隊にボコられた薩長並みだ。案の定、この後アメリカはボコられることになる。
そんなある日、前日に結婚したばかりのマービン博士と妻のキャロルは、いちゃつきながら車でロケット打ち上げ基地に向かっていた。キャロルが運転し博士が助手席というのがいかにもアメリカらしい。この頃日本の男女合わせた運転免許保持者は、アメリカの女性運転免許保持者より少なかっただろう。
博士がテープレコーダーでその日の打ち上げについて口述筆記を始めたら、異様な音とともにどこからともなく円盤が出現。博士の車の周囲を飛ぶと、垂直に上昇して消えてしまった。

気を取り直し基地に到着、人工衛星打ち上げの準備の最中、夫の口述をタイプ打ちしていたキャロルは、そこに円盤の発した音が録音されている事に気が付く。
その頃基地に、キャロルの父親ハンリー将軍が到着して、打ち上げの中止を要請するが既に地生ら中止できない状態になっていた。いや、それなら
電話しろよと言いたくなる。

人工衛星は無事打ち上げられるが、最近頻繁に人工衛星との連絡が取れなくなっていた。ハンリー将軍はパナマに落下した物体の調査のため出向いていたのだが、落下したのは行方不明となっている人工衛星と判明し、その為打ち上げの中止を要請したのだった。だから、そんな重要な事は電話で連絡しろよって。その時さっき打ち上げら人工衛星とも連絡が途絶えたという報告が入る。

翌日も再度打ち上げをしようと基地で待機する二人。一方将軍は外で見学。この待遇の差は何だ?その時ゲートに円盤が出現したとの報告が入る。直ちに警備兵が出動し防御シールドの外に出た宇宙人にボフォース機関砲で攻撃し一人は倒すが、円盤はバリアーで守られ効果がない。逆に宇宙人が放つビームで一瞬で消えてしまった。一人殺され怒り心頭になったのか、円盤は倒れていた将軍を運び入れ上昇し、次々と基地を攻撃。深層部にいたマービン夫妻以外は死んでしまう。

救出された夫妻は、テープに録音した音をスロー再生すると声になることが分かり、その事を軍に訴えるが相手にされない。失意の二人だったが再び宇宙人から連絡が入り、指定された場所に博士が出かける。心配になったキャロルは、監視役のハグリン少佐とともに後を追い、途中でスピード違反の取り締まりをやっていた白バイ警官まで巻き込み、海岸に到着すると、そこには円盤がいた。一同が乗り込むと、そこには、宇宙人から記憶を抜き出され
て抜け殻となったハンリー将軍がいた。更に白バイ
警官も同じ目にあい、残った3人は戻され56日の猶
予が与えられ降伏するように求められる。

博士から事の次第を聞いた軍首脳は驚き、新兵器の開発や市民に避難を命令する。
新兵器の開発を行うマービン博士は紆余曲折の末、電磁波で円盤の磁気フィールドを攪乱する兵器が完成。急いで試作品をワシントンに届けようとするが、その前に円盤が出現する。果たして新兵器は間に合うのだろうか?
本作のハリー・ハウゼンの特撮は素晴らしく、ストップモーションで表現された円盤は、独特のカクカクした動きから恐怖を盛り上げ、マービン博士夫妻を襲う冒頭から、クライマックスのワシントン襲来まで、画面せましと暴れまくっている。ただ、人間ドラマが、盛り上がりに欠けてしまったのがなんとも残念。
また、1956年に制作された本編であるが、本多、円谷コンビだったら特撮とドラマ双方で盛り上げるようにしたはずだ。事実、「地球防衛軍」ではそうした構成で作られている。そう考えると、この頃の日本の特撮映画のレベルの異常なまでの高さが分かる。
何はともあれ、この映画なくして、UFO映画を語ることは出来ない。