DISCASレビュー

カッツ
2025/10/20 08:26

ソウルの春

1979年12月12日に韓国・ソウルで発生した粛軍クーデターを題材に、反乱軍と鎮圧軍による9時間にわたる攻防を、フィクションを交えて描いた作品。フィクションとして観れば、緊迫感に満ちた展開で、ハラハラドキドキの良作だと感じた。
登場人物の名前は若干変更されているが、実在の人物がモデルとなっており、歴代大統領を含む二人が極悪人として描かれている点は印象的だった。日本では、歴史を題材にした作品は史実に忠実であることが求められ、少しでも事実と異なる描写があると批判を受けがちだ。一方、韓国では「映画は作り物であり、フィクションで構わない」という姿勢が強いように感じる。
主役の全斗煥は、違法な軍事クーデターによって政権を掌握し、後に大統領となった人物として描かれている。劇中のメークも実物に非常に近く、リアリティが高い。映画の冒頭で「これはフィクションです」と断りが入っていても、観客はその内容を事実として受け止めてしまう可能性があるのではないだろうか。特に近年の歴史を扱う映画には、事実と演出の境界に対する慎重な配慮が求められると感じた。
 

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