DISCASレビュー

かずぽん
2025/06/28 22:44

バッタ君 町に行く

【一寸の虫にも五分の魂】

 

(1941年・米・78分・アニメ)
監督:デイヴ・フライシャー
製作:マックス・フライシャー
原題:MR.BUG GOES TO TOWN / HOPPITY GOES TO TOWN

しばらく「ローランド」を離れていたバッタのホピティ(以下、バッタ君と呼ぶ)は、ニューヨークのマンハッタンに帰って来た。ローランドの皆もバッタ君の帰りを待ち侘びていたが、以前とはちょっと町の様子が違っていた。
ローランドは、作曲家のディック・ディケンズと妻のメアリーの住宅の庭に昆虫たちが作った町だった。
この家のフェンスが壊れたために人間たちが近道として庭を通るようになり、土地は踏み荒らされ、捨てられたタバコの吸い殻で町が火事になってしまう不幸に見舞われていたのだ。
蜂蜜屋のバンブル氏にはハニーという娘がおり、彼女はバッタ君の恋人だったのだが、ずる賢いビートルが彼女を狙っていた。

1941年製作の作品とは思えないほど完成度が高く、ミュージカル仕立ての楽しいアニメーションになっている。
擬人化された昆虫たちが多数登場し、それぞれの思惑や群集心理、リーダーシップやそれに従う人々の依存の気持ちや責任転嫁の様子が妙に生々しく感じた。
ビートルが自分の利益(ハニーとの結婚)のために卑怯な手段を使い、その手下となって働くのが「蚊」と「蠅」というのも何だか意図的。(笑)
勿論、バッタ君は恋人のハニーのために頑張るのではあるけれど、ローランドの人々(虫たち)への思いも彼らの「幸福の要素」であるというのが感じられて清々しい。
バッタ君が作曲家夫婦の会話から、彼らが救世主となってくれることを信じて、それを町の皆に話すのだ。しかし、またもやビートルの悪意に阻まれ、バッタ君は町の皆からそっぽを向かれることになってしまう。

アニメの動きはスムースで活発。コミカルな動きも含めて惹きつけられる一方、ビルの建築現場の騒音をも感じる作画(鉄骨を組み立てる工程やボルトで固定していく様子)は素晴らしい。
余談になるけれど、最近、我が家の花畑に数種類の蟻が巣を作っていて、あまりの出没の多さに「アリの巣コロリ」や蟻用の殺虫剤を使ったばかりだったので、非常に胸が痛んだ。

因みに、『海底二万哩』『ドリトル先生不思議な旅』『ソイレント・グリーン』などの監督リチャード・フライシャーは、本作の製作マックス・フライシャーの息子である。

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