カッツ
2025/10/12 07:57
ダンケルク
1964年のジャン=ポール・ベルモンド主演『ダンケルク』も印象深い作品だったが、2017年版『ダンケルク』は、まるでドキュメンタリーのような臨場感と緊迫感に満ちた映画だった。
第二次世界大戦初期、連合国軍はフランスの小さな港町ダンケルクに追い詰められ、約30万人の兵士が海を背に絶体絶命の状況に置かれていた。逃げ場のない彼らを救うため、チャーチルはイギリス国民に呼びかける。民間のボートやヨットがドーバー海峡を渡り、兵士たちを救出するという奇跡のような作戦が展開される。
この映画には、明確な「主役」は存在しない。それぞれの場所で、それぞれの人々が、静かに、しかし確かにヒーローとして描かれている。空、海、陸の三つの視点から語られる物語は、観る者を戦場の只中へと引き込む。
1964年版の『ダンケルク』も忘れがたい。ジャン=ポール・ベルモンド演じる主人公が、女性とともに脱出することを約束しながらも、彼女がハイヒールを手に浜辺を歩いてくる姿を見つめながら息を引き取るラストシーンは、今でも鮮烈に記憶に残っている。
2017年版は、個人の物語よりも集団の記憶を描いた作品として、戦争の非情さと人間の尊厳を静かに浮かび上がらせていた。
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