取材・イベント

村松健太郎
2025/07/02 14:22

諦観から生まれる希望『愛されなくても別に』

諦観から生まれる希望『愛されなくても別に』

”色々なコト”を抱えながら生きる女性の連帯とも友情とも言えるものを描いた、ちょっと不思議なシスターフッド映画。
重い物語である事は、確かに間違いのないことなのですが、主演南沙良と相手役の馬場ふみか2人の組合せの良さもあって結果的に後味は少し爽やかでした。

色々な形の精神的、肉体的な虐待、苦痛そして貧困など今日的なテーマを描いていますが、何処か軽やかな映画に仕上がっていて、とても新鮮な感覚でした。

この辺りは脚本も担当した井樫彩監督の演出によるところが多いのかと思います。2018年に長編デビューという新鋭ですが、良い意味でバランス感覚に優れていますね。変に小さくまとまっているというわけではないのですが、テーマを巧く咀嚼しつつ、見ていて楽しいところのあるという映画になっています。こういう重い話は敢えてどこか抜けてたところを描く、ポップなテイストを取り込むことで、逆に物語やテーマが活きてきます。

この演出を体現しているのが主役の南沙良の相手役を務めた馬場ふみか。近年多ジャンルで大活躍ですが、今回もいい意味で見る側を裏切ってくれる好演を見せてくれます。

南沙良はちょっとサスペンス系の作品が続きましたが、こういう等身大の役柄ももっとやっていいと思いました。

どのタイミングでこの二人で行こう!ということになったのかわかりませんが、結果として非常にお互いにとっても物語のテーマにとっても相性の良い二人となりましたね。

 

 

【ストーリー】 「愛してる」-。その言葉はすべてを許す魔法か、それとも地獄か。 彼女たちが選んだ未来とは? 宮田陽彩(みやた・ひいろ)(19)は、“クソ”のような大学生活を送っていた。 大学に通い、それ以外の時間のほとんどを浪費家の母に変わっての家事とコンビニでのアルバイトに費やし、その中から学費と母と2人暮らしの家計8万を収める日々。 遊ぶ時間も、金もない。 何かに期待して生きてきたことがない。親にも、友人にも・・・。 いつものように早朝にバイトを終えた宮田は、母のために朝ご飯を作り、家事をした後に大学に登校していた。そこで大学の同級生であり、バイト先の同僚でもある 江永雅(えなが・みやび)(24)のひょんな噂を耳にする。 威圧的な髪色、メイク、ピアス──バイト先ではイヤホンをつけながら接客する、 地味な宮田とは正反対の彼女の噂。 「江永さんのお父さんって殺人犯なんだって」 他の誰かと普通の関係を築けないと思っていたふたり。ふたりの出会いが人生を変えていくー。 
 

2025年7月4日 新宿ピカデリーほか全国ロードショー

 

Ⓒ武田綾乃/講談社 Ⓒ2025 映画「愛されなくても別に」製作委員会 

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