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私の好きな映画

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2025/02/20 21:02

『邪悪なるもの』~邪悪なパワーみなぎる問題作~

皆さんこんにちは
椿です!

 

いやぁ、ひっさびさに、ド級のパワーあふれるホラー映画を観ましたよ!

 

こういうのを待っていたのさ!

 

そ・れ・は・・・

 

『邪悪なるもの(2023)』

(c)2023 Digital Store LLC

【あらすじ】

悪鬼が世界を跋扈し、教会というシステムそのものが崩壊してしまった近未来。

アルゼンチンのある田舎町。ここでひっそり暮らしているペドロとジミーの兄弟はある日、森の中で体がバラバラの死体を発見する。その死体は儀式で使うような道具を持っていた。この死体はその森の先にたった1軒しかない家を訪ねる途中で何者かに襲われたであろうと推測した二人はその家を訪れるが、そこで、身体がぶくぶくに膨れ上がり体中に浮腫が浮かび上がり強烈な悪臭を放ち、もはや腐りながらも瀕死の状態で生きている、その家の息子を発見する。これは悪魔憑きの症状であり、都会に流行っていたものが、遂にこんな田舎町にまで及んでしまったと一同は戦慄する。

(c)2023 Digital Store LLC

憑かれた者の体から悪魔を払うには七つのルールを厳守しなければならない。また、それは訓練を積んだ「クリーナー」と呼ばれる者の手によってのみ行われる必要があった。森で殺されていたのはその「クリーナー」であった。
悪魔憑きの事実を知ってしまった兄弟とその家の大家は屍のように生きている男を連れ去り町の外へ捨ててしまおうと画策するが、途中トラックの荷台から落としてしまい見つけられない。

その日から、徐々に悪魔の力が伝染病のように広がり、大家が飼っている家畜のヤギが悪魔に憑りつかれ変形。恐れおののいた大家は、悪魔憑きにやってはならない「銃殺」をしてしまう。そして大家とその妻は無残な死にざまを晒すことに・・。
悪魔の力が解き放たれたことを悟ったペドロは自分の母親を呼び寄せ、郊外に住む元妻と子供たちのもとへ向かい、理由も告げず町から脱出しようと試みるが、飼い犬が発狂し、子供を噛み殺し、その犬をまた銃殺したことで悪魔憑きが感染し地獄絵図と化す。
息子2人を助け出し逃げだす兄弟と母と息子。しかし、既に悪魔憑きが広がりつつあり逃げ道はないと悟ったペドロはジミーの知り合いで霊力のあるミルタに助力を求め、悪魔と対峙する。

果たして彼らは生き残ることができるのであろうか・・


『悪魔憑き』と『パンデミック』ホラーの融合

皆さんは、「悪魔憑き」というと、どんな映画を想像しますか?

大体は『エクソシスト』のように、悪魔に憑りつかれた人間が、暴言を吐き、汚物を吐き、人間とは思えない形相となった者を、バチカンから派遣された悪魔祓い師(神父)が対決する、そんな作品を想像しますよね?ごく最近では『バチカンのエクソシスト』という作品が大ヒットしました。

しかし、本作で描かれる「悪魔憑き」はちょっと違います。

本作の「悪魔憑き」とは

① まるで感染症のように次々と悪魔憑きが広がってゆく

②憑りつかれると異形の者に変形してしまう

③子供や動物にも容赦なく憑りつくが、子供に憑りついた場合は外見で判断できない

のです。

(c)2023 Digital Store LLC

まさに感染症のパニックやゾンビ映画のような「パンデミック」パニックを「悪魔憑き」と融合させうという斬新な手法で恐怖を演出します。
まぁ、一応、悪魔や死霊に憑りつかれた人間が感染するかのように悪魔に憑りつかれ人を襲う、というのは『死霊のはらわた』『デモンズ』『REC』など、「ゾンビ映画」として分類される作品にすでに使われている手法ではありますが、これらの作品は憑りつかれた人間が、もはや自分の意思に関係なく、まさにゾンビとなってほかの人間に襲い掛かってくるのに比べ、明らかに悪意を持って、正常な人間を誘い込み、恐怖と混乱の中に取り込んでいこうとします。

そして、そんな「悪魔憑き」が起きている環境というのが、特異な設定となっています

①悪鬼が跋扈し、教会はすでに崩壊
②都会では、感染症のように「悪魔憑き」が広がっている
③田舎では、まだ「悪魔憑き」の例がなく、人々は「それは都会のこと」と高を括っている

④悪魔憑きへの処置は「クリーナー」と呼ばれる、専門の知識を持った者のみ行うことができる

という、絶望的な状況な中で悪魔憑きの感染者と対峙しなければならなくなるのです。

そんな「悪魔憑き」から生き残るための7つのルールが、昔から伝わっていました

 

1 電気をつけてはいけない

2 動物に近づいてはいけない

3 「それ」が触れた物を身につけてはいけない

4 「それ」を傷つけてはいけない

5 「それ」を名前で呼んではいけない

6 絶対に銃で撃ってはいけない

 

そして、7つ目は・・・・?

 

このルールは、ペドロの母親が孫に語るシーンで語られるルールですが、7つ目は語られていないのです・・・。一体、この7つ目は何なのか・・・

 

そして、実際に我々が体験してきたコロナやSARS、新型インフルエンザの時のパンデミックパニックと同様、人々は、当初「自分は大丈夫」的な根拠なき自信で病気に向き合い、いざ、感染が広がるとパニックを起こし、「やってはならないこと」を次々と破って勝手な行動に出てしまい、感染を広げるという悪循環を、本作の映画の中でも体験してしまいます。
特に「銃を使ってはならない」というルールは、銃が普通に使えるアルゼンチンでは、皆、恐怖のあまり手に取ってしまい、「悪魔憑き」を撃ち殺してしまうのです。そうすると、瞬く間に感染が広がる・・。そうなってしまうと、感染を防ぐには自ら死を選ばなければならない・・。
まさに、この「ポスタービジュアル」に使われている某シーンですが、かなりエグいシーンなので、耐性の無い方は要注意です!


子供にも動物にも容赦のない残酷描写

(c)2023 Digital Store LLC

前半から中盤にかけて、これでもかと畳みかけてくる残酷描写は、CG全盛の今の時代に合って、CGとアナログな特殊メイクアップによって、観る者を恐怖のどん底に陥れてくれます。

特に「悪魔憑き」という、これまでキリスト教的な観念のない、私達日本人にとっては、何が怖いかがよくわからない世界観だったものを「パンデミック」な要素を取り入れたことで、ビジュアル的にも「悪魔憑き」の怖さを感じさせてくれるものとなっています。
そして容赦ないのは、子供や動物にもすべからく平等に「残酷な仕打ち」が行われることです。今のコンプライアンスにうるさいハリウッドでは成し得ない表現であり、アルゼンチンの作品だからこそできる残酷絵図となっています。

例えば、大型犬が少女を頭から噛みついてぶんぶん振り回す、とか、子供の脳髄をバリバリ食べちゃう、とか、数人の子供が寄ってたかって、不敵な笑みを浮かべながら鈍器で殴って頭蓋を潰すとか・・・
パワフルな『死霊のはらわた』の、エネルギーに満ちた人体破壊表現の中盤までとに、『ザ・チャイルド』の非常に陰湿な胸糞さを兼ね合わせた後半で何度も楽しめるホラー映画となっています。

 

とにかくパニくった人間がホラー映画のセオリー通り、やってはいけないことをやりまくって、ちょっと間抜けな感じがするのはご愛敬で、もう、どうやっても悪魔の勝利は確実に思えるのですが、果たしてペドロとジミーの兄弟、そして息子たちは無事、悪魔の魔の手から生還することができるのでしょうか・・・。

 

それは是非、劇場でお楽しみください

 

本作は「2023年シッチェス・カタロニア国際映画祭」でラテンアメリカ系の作品で初めて、長編最優秀作品賞を受賞しました


本作の監督であるデミアン・ルグナは、オカルトホラーとしてカルト的人気を誇る

『テリファイド(2017)』

を監督しました。

ある住宅街で起きた、奇怪な事故や謎の現象の数々。大型トラックに子供がひき殺され、台所のシンクの排水溝から聞こえる謎の声、何者かの力によって壁に頭を打ち付けられ死ぬ女性、ベッドの下に潜む何者か・・。事故や殺人事件、謎の霊現象がある住宅街に頻繁に起こるようになり、刑事と鑑札医、それに超常現象の研究家が事件に挑むが、想像をしえない恐怖が彼らを待ち受ける・・。


こちらもかなり恐怖を盛り立てるのが上手く、不気味な謎などは『呪怨』などのJホラー的な要素も見られ、とても見ごたえのある作品になっております。

なお、本作はホラー映画ファンの間で高く評価され、ギレルモ・デル・トロ制作によりハリウッドリメイクが決定されています


【作品データ】

2023年製作/100分/R15+/アルゼンチン・アメリカ合作
原題:Cuando acecha la maldad
配給:クロックワークス
劇場公開日:2025年1月31日

新宿武蔵野館ほか公開中

 

◆監督・脚本:デミアン・ルグナ

◆出演:エセキエル・ロドリゲス、デミアン・サロモン、シルビナ・サバテールほか

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1 件の返信 (新着順)
やすす
2025/02/20 23:05

救いなき絶望のってうたってるのがたまらんです😁


椿五十郎 バッジ画像
2025/02/21 10:31

やすすさん!
コメントありがとうございます!

そうなんですよ!
まさにその謳い文句がぴったりな絶望感です!
前~中盤にかけての畳みかけがすごいので後半少しエネルギー切れな感は否めませんが、後味の嫌ぁな感じになりますので、その感覚味わいたい方は是非ご覧いただきたいと思います