【Foyer vol.4:OttO】映画と共に暮らし、カルチャーが交差する。大宮の新拠点

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映画館に住むという、夢が形になった場所。
カフェ、シアター、シェアハウスが織りなす、
現代における新たな暮らしの物語が、ここから始まる。
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目次
1.街の交流の場として。住める映画館「OttO」誕生
2.「映画館の住人」という、新しいライフスタイル
3.物語の余韻を絶品ピザで彩るカフェ
4.製作者の意図を届ける、オリジナリティ溢れる鑑賞環境
5.大宮の地で、新たな物語のハブとなる
1. 文化の交差点として。住める映画館「OttO」誕生
鉄道の街で知られている埼玉県大宮。都心へのアクセスも良く、駅周辺にはいくつもの商業施設が立ち並ぶ利便性に優れた街。実はここ大宮には、古くは昭和初期から数多くの映画館が興廃を繰り返し、この街の娯楽を支えてきた歴史がある。そんな場所で、映画業界全体に大打撃を与えたコロナ禍に着々と計画を進め、2025年4月に新たに誕生したのが、今までにない映画館、カフェ、シェアハウスが一体となった複合施設「OttO」だ。

代表・今井健太さんの妻方の祖父母が営んだ自宅兼アパートだった建物の立ち退きをきっかけに「OttO」設立の話が動き出した。かつて、アパートには近隣の人々が集い笑い声の絶えない地域の憩いの場だったという。世代を超えてその土地の建て替えを任された今井さんの頭に、ある日ふと「ここに映画館があったら」という考えが閃いたという。普通の賃貸住宅を建てるより、地域の人たちが集える憩いの場としての役割を引き継ぎ、プロジェクトは進み出した。
「OttO」という名前の由来は、当時6歳だった息子の「おっ父がつくるから、おっ父の映画館がいいんじゃない?」という一言。イタリア語で「八(末広がり)」や古代ゲルマン語の「相続財産」など多くの意味が重なり、人々が集まる憩いの場が何世代にもわたって続いてほしいという願いもこもった素敵なネーミングとなっている。
2. 「映画館の住人」という、新しいライフスタイル
OttOの最も革新的な面は、3階から5階を占める全25戸のシェアハウスの存在だ。単なる居住スペースではなく「映画館の住人」という、これまで誰も経験したことのなかった非日常を日常として提供する試みである。映画館に「ただいま」と言って帰る体験は、ここでしか経験しえない、何にも代えがたい魅力だ。

住人は、20代から30代が中心。純粋な映画好きもいれば「なんだか面白そうだから」と、このユニークなコンセプトに惹かれて越してきた人もいるという。入居者同士の風通しは良好で、最近では共用スペースで餃子パーティが開かれたそうだ。様々なバックグラウンドを持つ住人たちが、キッチンで食卓を囲み、笑い合う。その傍らには、これから上映される作品のポスターが飾られ、階下からは微かに予告編の音が漏れ聞こえてくるかもしれない。
入居者は、特典として月4回まで無料でスクリーンでの鑑賞が可能。仕事帰りに、まるでリビングの延長のようにシアターへ向かう。鑑賞後はラウンジで顔を合わせた隣人と自然に感想を交わす。映画が特別なイベントから、呼吸するように自然な生活の一部へと変容する。ここではそんな映画ファン垂涎のライフスタイルが、現実のものとして提供されている。
3. 物語の余韻を絶品ピザで彩るカフェ
1階に構えるカフェは、街に開かれたOttOの顔だ。設計を手がけた建築家・佐々木善樹氏の工夫により、空間を最大限に広く感じさせる、開放的で心地よい空間が広がっている。ここは、映画の前の高揚感を温め、鑑賞後の深い余韻を静かに受け止める場所。
定番のマルゲリータから、季節の食材を使ったオリジナルピザまで。高温の窯で一気に焼き上げられる本格的なピザは、地域のブルワリーと連携したクラフトビールとも相性抜群だ。映画を観る前の腹ごしらえに、あるいは鑑賞後に仲間と感想を語り合いながらシェアする一皿に、これほど相応しいメニューはないだろう。

また、壁一面を埋め尽くす書棚には、映画に関連した本をはじめ様々なジャンルの本が配架され、知的好奇心を刺激する。ソファ席でコーヒー片手にゆったりとした時間を過ごすのもおすすめ。

4. 製作者の意図を届ける、オリジナリティ溢れる鑑賞環境
50席のシアターは、固定概念にとらわれずにオリジナリティあふれる空間となっている。最前列に配置されたソファクッション席では、完全に身を預け、視覚と聴覚をスクリーンに集中させることで他に類を見ない没入感を得られる。スクリーンは、 常設の映画館としては世界初のペイントタイプを導入。スクリーン裏に設置されたスピーカーの音を通すためのサウンドホールがないためプロジェクターが放つ映像本来の美しさを余すことなく再現し、クリアなサウンドも実現している。

そして、サウンドシステムは、世界的音楽家、故・坂本龍一氏が音響監修を務めた「109シネマズプレミアム新宿」でも設置されている最高水準の音響システム「BWV Cinema」を導入。セリフの息遣いから微細な環境音まで、あらゆる音が監督の意図した通りに空間を駆け巡り、観客を物語の中へと引きずり込む。

5. 大宮の地で、新たな物語のハブとなる
OttOが目指すのは、かつてこの街にあった温かいコミュニティの再構築だ。昔、国鉄には”工友会”という互助組織があり、お風呂やビリヤード、映画館などを備えた労働者のための娯楽施設がコミュニティの中心だった。今井代表はそういったコミュニティの再構築のような仕掛けになれば良いと語っている。
映画館には出入り口が二つ設けられており、どちらからも通り抜けが可能となっている。「なるべく意味を持たせたくないんですよ。意味があると行きにくいじゃないですか。だから、通り抜けるだけでも、トイレを借りるだけでも全然オッケーです」。映画を観る、カフェで食事をする、シェアハウスに帰る。そんな明確な目的がなくても、誰もが気軽に立ち寄れる場所が、ここには開かれている。

かつて国鉄職員たちの暮らしを支え、人々の交流を見守ってきた土地の記憶。世代を超えて受け継がれた「人が集う場であってほしい」という願い。OttOは、それらを未来へと繋ぐ、新たな物語のハブとなる。2025年春、大宮の地に灯るスクリーンの光は、映画を照らすだけではない。それは、この街に暮らす人々の日常と、未来をも照らし出す、希望の光となるに違いない。
「OttO(オット)」
【営業時間】カフェ営業時間:9時00分〜21時00分(通し営業)
※毎週水曜日は縮小営業:12時00分から18時00分
【定休日】不定休
【住所】埼玉県さいたま市大宮区桜木町1-345
【公式HP】https://otto-extended.com/
【SNS】X、Instagram
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