DISCASレビュー

カッツ
2025/11/29 07:38

お嬢さん

2016年公開韓国映画。1939年、日本統治下の朝鮮を舞台にしたサスペンスドラマである。「藤原伯爵」と名乗る詐欺師(ハ・ジョンウ)が、スッキたちにある計画を打ち明けるところから物語は始まる

その計画とは、日本人の華族と結婚して「上月(こうづき)」という和名を手に入れた親日派の朝鮮人(チョ・ジヌン)の姪・秀子(キム・ミニ)を誘惑し、結婚することで、亡き妻が遺した莫大な遺産を手に入れるというもの。しかし物語は一筋縄ではいかず、騙すつもりが騙されるという、二転三転する展開が待ち受けている

話の構造は複雑で、視点の切り替えや時間軸の操作によって、観る者の理解を試すような仕掛けが施されている。その分、物語に深みがあり、登場人物たちの心理戦がスリリングに描かれている。

特筆すべきは、日本統治下の朝鮮を再現したセットの完成度。当時の建築様式や衣装、調度品に至るまで細部にこだわりが感じられ、相当な制作費が投入されたことがうかがえる。映像美と美術の力で、物語の世界観がより説得力を持って立ち上がっている。

ただし残念だったのは、韓国の俳優が日本語を話す場面で、吹き替えがなく、発音やイントネーションに違和感が残った点。物語のリアリティを高めるためにも、日本語部分は吹き替えや言語指導があれば、より完成度の高い作品になったのではないかと感じた。

『お嬢さん』は、歴史と欲望、欺瞞と愛が交錯する濃密なドラマであり、もう少し整理された構成と言語面の工夫があれば、さらに多くの人に届く傑作になったと思う

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