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カッツ
2025/12/17 10:47

わらの犬

「わらの犬」という題名は、『老子』の「天地不仁、以万物為芻狗」に由来し、天や自然は人間を特別扱いせず、万物を祭りのためのわらの犬のように扱い、用が済めば捨て去る――という人間存在の矮小さを示す言葉である。本作は、平和主義者が追い詰められて暴力に目覚める姿を通じて、この哲学を映像化している。

映画には1971年製作のサム・ペキンパー版と、2011年製作のロッド・ルーリー版がある。一般的には前者の評価が高いが、2011年版も十分に見応えがある。物語は、都会に住むインテリのデヴィッドが妻エイミーとともに彼女の故郷であるミシシッピの田舎町へ移住するところから始まる。静寂を求めたはずの生活は、やがて粗野な地元の男たち――エイミーの元恋人チャーリーを中心とする人々――による執拗な嫌がらせに変わり、ついにはエイミーが襲われるという衝撃的な展開へと至る。

1971年版が「暴力そのもの」を主題としているのに対し、2011年版はアメリカ南部の田舎に潜む排他的で粗暴な人々の姿をリアルに描き出している。こうした人物像は現代社会の政治的背景とも重なり、フィクションでありながら社会の断面を鋭く映し出す作品となっている。

『わらの犬』は、暴力と人間性、社会の偏見と排他性を描いた作品であり、観る者に強い衝撃と深い余韻を残す。

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