DISCASレビュー

カッツ
2026/01/08 08:23

海辺の生と死

2017年7月に公開された日本映画『海辺の生と死』は、太平洋戦争末期の奄美群島・加計呂麻島で出会った島尾ミホと島尾敏雄夫妻をモデルにした作品である。満島ひかりが主演を務め、静かで重層的な世界を体現している。

当初は沖縄本島の物語だと思って観ていたが、舞台は奄美だった。アメリカ軍が迫る中、島の学校教師と日本軍の隊長が出会い、淡い恋情を育む。物語はドキュメンタリーのような質感で、時間がゆっくりと流れていく。本島とは違い爆撃はあるものの、島が壊滅的な被害を受けることはなく、やがて終戦を迎える。

劇的な展開があるわけではなく、淡々とした日々の積み重ねの中に、島の美しい風景と、二人の愛、そして戦争の影が静かに滲み出る。約3時間に及ぶ長尺で、観る側にも忍耐を求める作品だが、その静けさこそが本作の特徴とも言える。

満島ひかりの身体的な表現は唯一の見どころで、彼女の存在感が作品全体を支えている。派手さはないが、戦争という時代の中で確かに息づいていた“生”と“愛”を丁寧に描いた一本だった。

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