DISCASレビュー

カッツ
2025/11/29 07:31

瘋癲老人日記

谷崎潤一郎原作、若尾文子と山村聡主演の映画は、老人の性を真正面から描いている。物語は77歳の老人(山村聡、当時52歳)が息子の嫁に執着し、消えかけた性欲を彼女によって蘇らせようとする姿を中心に展開する。老人は嫁に迫るが、嫁(若尾文子)は巧みに「オネダリ」しながら小出しに応じ、決して全面的には受け入れない。その駆け引きは観ていてじれったくもあり、同時に男と女の関係の複雑さを象徴しているようにも思える。山村が52歳の若さで77歳の老人を演じているのと、この山村を「おじいさん」と呼ぶのが非常に違和感があった。中村鴈治郎あたりがよかったし、「旦那さん」と呼ぶのがいいと思った。

映画は大きな事件を起こすことなく、老人と嫁との関係を延々と描き続ける。そのため展開に緩慢さがあり、観る者によっては退屈に感じられるかもしれない。しかし、この「グダグダ」とした関係性こそが、老いと欲望、そして人間の滑稽さを浮き彫りにしているとも言える。作品全体に漂う倦怠感は、谷崎文学の持つ独特の粘着質な世界観を映像化した結果なのだろう。

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