私の好きな映画

本作は、北海道の雪景色を舞台に、元オリンピック射撃選手候補でありながら警官として生きる男の人生を静かに描いた作品である。物語は、主人公の目前で上司が連続警官射殺犯“指名22号”に殺される衝撃的な事件から始まり、その犯人を長年にわたって追い続ける過程を中心に展開する。途中にはいくつかの捕り物があり、やがて親しくなった飲み屋のママの情報から犯人に辿り着くことになる。

石田あゆみは、不倫した元妻役として登場し、主人公の過去を象徴する存在となっている。彼女の役柄は『北の国から』での印象とも重なり、複雑な女性像を際立たせている。

高倉健は、雪の中で寡黙に佇む姿が印象的で、孤独と責任を背負う男の哀愁を見事に体現している。また、飲み屋のシーンで流れる八代亜紀の「舟唄」が物語に深みを与え、登場人物たちの心情に静かに寄り添っていた。雪の降る大晦日の場面は特に美しく、厳しい撮影環境を感じさせながらも作品に強い余韻を残す。さらに、烏丸せつ子が演じる少し風変わりな女性も印象的で、物語に独特の彩りを添えていた。